03:夜

※夜兎の性質に対して模造設定などがあります。


身体を弄って、相手を知った気になって、それでもちっとも相手がわからない。
高杉晋助という男はそういう類の男だった。
今までに会ったことのないタイプの男。
酷く魅力的に誘う癖に、寄ればその身を翻す。
手に留まることのない蝶のようなそれ。

だからこそ神威は高杉に夢中になった。

男など、神威とて御免だ。
高杉だってそうだろう。
以前一度、高杉の性的嗜好について神威が問うたことがあったが、高杉はその時男色については否定した。
寝ることもある、という程度だ。夜兎とて戦場で女日照りが続けばそういうこともある。必要であれば異性だろうと同性だろうと寝るが好きなわけでは無いと、高杉ははっきり云った。
けれども高杉は神威とこうして夜を共にする。
必要だと思っているのか、或いは単純に押し入る神威に根負けしたのか、そのどちらもなのか。
高杉の身体を開いて己のもので征服するという行為は神威にとって酷く堪らなく興奮することで、高杉という男を性的なことにしろこうして追い詰められるというのはこの上の無い快感だった。
そして何より高杉は上手いのだ。男色を否定した癖に、高杉の手管は巧みだった。
この身体を他の誰かが知っているかと思うと一瞬、地球種を皆殺しにしてやろうかとさえ思うほどに、高杉は神威にとって極上だ。
「イイ?」
「・・・っ」
互いの舌を合わせ、絡めることがこれほど気持ち良いと知ったのも高杉が教えたからだ。
そっと、壊さないように高杉の身体の隅々にまで指を這わせ、舌で舐め、びくびくと高杉の身体が慄える場所をしつこく攻めれば高杉は堪らず聲をあげる。
少し低い掠れた聲、それにぞくぞくする。
堪える様も、乱れ濡れる目線も堪らない。挿入すれば痛みを耐えようと唇を戦慄かせる様もこの上なかった。
今日は高杉の顔が見たくて互いに向き合う正常位だ。我慢できなければ出先で後ろからもあったが、神威は大抵高杉と向き合うこの形を好んだ。この方が高杉の顔がよく視えていい。
高杉と致す時は大抵暗がりだが、夜兎の眼は夜目に利く、高杉にはわからないだろうが、この暗がりでも神威にはよく視えた。
「シンスケはさ、此処好きだよネ、浅く挿れた場所」
ぐぐ、と中を軽く揺すれば高杉が息を飲む。
「っ、だまれよッ」
「ぐりぐりすると凄い締まるし、あんたって本当エロいよね」
「くっ・・・」
これでもかと脚を開かせて己のものを奥まで穿ち、そして抜けるか抜けないかの浅い場所まで引くと高杉の身体が跳ねる。
汗が滴り落ちて、聲を堪える様が堪らなく淫靡で、そして中は神威を奥へ奥へと誘うようにきゅうと締まり、それが堪らなくて神威は理性が飛ぶぎりぎりまでその身体に夢中になる。
「もっと、顔見せてよ」
「う、ッ・・・」
聲を堪えているのが辛い。
神威の攻めはいつもそうだ。最初こそ下手も下手、相手にする高杉の方が莫迦らしくなる程辛かったが、最近ではコツを掴んだのか、そういったところだけ勉強熱心なのか、神威は高杉をヨがらせることに力を注いでいるらしい。
それが酷く癪だが、互いに擦り合わせた結果というか、文字通り互いのものを擦り合わせているのだが、ヨくなってきた。
高杉が逃れようと身を捩れば、逃がさないと云わんばかりに神威が高杉の手首を押さえる。
そのままぐい、と突き入れられれば駄目だ。
「はっ・・・ッゥ・・・!」
くう、と啼くように息を洩らし、快感を逃そうとするがそれを見逃す神威でも無い。
高杉が感じた一点を徹底的に攻めるように中を擦り、高杉が悲鳴を上げ、絶頂を向かえるまで攻めたてた。
「・・・ッ!」
「く・・・ッ」
中の締め付けに持って行かれそうになるのを神威がどうにか堪える。
そして何度も高杉が出しきるまで絶頂が続くように同じ場所を突けば、高杉がついに折れた。

「アッ・・・アアッ・・・ッ!」
悲鳴が嬌声に変わる。
それを待っていたかのように神威は乾いた己の唇を舐め、そして高杉の身体を隅々まで蹂躙した。
「凄・・・っ、相変わらずきついや・・・っ」
「あ、っう・・・アッ・・・」
そこ、と高杉が息を洩らすので神威は眼を細める。
「ココ?」
「はっ、アッ、も、やめっ・・・」
感じ過ぎて辛いと云ったところか、けれどもこんな高杉を前に止められるものか。
それに今止めたら物足りないのは高杉なのだ。
行為の中で高杉が嫌だというのは本気で神威を殴って来ない限りは手管であると神威は思っている。
つまりヤって欲しいということだ。
翌朝が早いとか予定が立て込んでいるとかで本気で嫌がっている時もあるがそれでも押し切れる時は押し切るのが高杉との付き合いで神威が学習した手管である。
それに、このままイけば高杉が善がり狂うのをみれるのだから自分が堪えている価値はあるというものだ。
一方高杉としては堪ったものでは無い。神威の攻めは増すばかりで、脚を閉じたいのにもう莫迦になっているのか力が入らない。
ぬぷぬぷと神威のものが抜き差しされて中を強く擦る度に、ぞくぞくとした感覚が下肢から上に上がってきた。
「んっ・・・っ・・・ッう・・・!」
ガクガクと身体が揺れる。
イって仕舞う。
神威の容赦の無い突きで頭が真っ白になる。
「アッ・・・あッ・・・アア・・・ッ・・・!」
白く焼き尽くされたような感覚、くらくらと酩酊した感じに己が達したのだと察した。
はあはあ、と息を荒く腹を見遣れば己が出した白濁とした精が盛大に漏れている。
これほどの快感で達したのが随分久しぶりのことなので中々息が整わない。
「はあ、くっ・・・」
濃厚な交わりに精を出しきったところで流石に疲れた。
腰が動かない。しかし神威はお構いなしに下から突き上げてくる。夜兎は底なしなのだ。やめろという前に聲が嬌声となって弾けた。
「アッ、アッ・・・もっ・・・くそっ・・・ッ」
びくびくと再び深く抉られて感じ入って仕舞う。
その無様に高杉は顔を背けるがそれも神威が赦さなかった。
「見せて」
神威は高杉の顔が見たいのだ。涙に濡れるその顔に唇を寄せる。
そして高杉の包帯に手をかければ高杉の身体がびくりとこわばった。
最初の頃は高杉の包帯の下が見たくても射殺されそうなほど拒絶されたものだが、一度解けた際にそのまま済し崩しでヤってからは高杉は神威の好きにさせた。
本当は厭な癖に、それでも高杉は神威が高杉の包帯の下を暴くのを止めない。
神威が高杉の包帯を解く時、高杉の身体はわずかに強張る。それでも耐えるように高杉は何も云わない。
そんな意地を張る高杉が見たくて敢えて神威は行為の際、高杉の眼を暴くのを好んだ。
「もっと、見せて」
「うるせっ・・・ッ・・・ぅ・・・」
深く抉って、そして中の痛いくらいの締め付けに熱があがる。
失くした彼の左目に口付けながら神威は満たされる。
はくはくと辛そうに息を洩らす高杉に煽られ、吐き出しそうになるのをどうにか堪えながら、イイところを目掛けて突き上げれば、高杉の啼くような悲鳴が嬌声となって耳元で散る。
「もっと・・・ッ」
「あっ・・・ッア、イく・・・ッ」
腰を揺らして失くした左目を晒して達するこの男こそが神威の全てを狂わせる。
神威は高杉の絶頂に達する締め付けに、今度こそ堪えず自身の吐き出した。

はあ、と息が漏れる。
互いに息を整えながら、恨みがましそうにこちらを見遣る高杉に神威は笑みを浮かべた。
「しつこいぞ・・・」
「二回もイっといて酷いなぁ」
枕元の煙管を震える手で取ろうとするので、その手をやんわりと神威は己の手で包み込んだ。
高杉の手のひらは多胡が出来た固い筋肉で締まっている。戦場にある手だ。
その手に唇を寄せながら神威は己の白い肌を惜し気も無く晒し、そして高杉の失くした左目を覆う前髪を掻き揚げた。
「やめろよ・・・」
「厭だよ、だって勿体無い」
ぐん、と高杉の手を掴み神威は股の間に深く身体を滑り込ませる。
まだ自身は高杉の中だ。
その動きがあらぬ場所を刺激したのか高杉の聲が上擦った。
「はっ・・・このエロ餓鬼・・・いい加減に・・・っ、アッ」
「そのエロガキに二回もイかされてるのは誰さ、ねぇ晋助」
目を細めるこの餓鬼が、酷く癪だ。
中を抉り、先程の快感が、白く焼き切れそうな感覚が高杉の中にぞくりと奔る。

「もっとだよ、もっと見せて」
「う・・・アッ・・・アアッ・・・!」
「ねぇ、晋助・・・アンタの地獄と、俺の地獄、合わさると天国になるみたいだ」

口付けは深く、夜は終わらない。
地獄、どこだって地獄だ。けれども違いねェ、と高杉は嬌声の合間に笑みを洩らした。
この真っ白に頭を焼き切られるような地獄は、天獄に違いない。
揺らされる感覚に、高杉は思考の全てを投げ捨てて、今度こそ目の前の男にしがみ付いた。
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