※ロキ×主人公×ロキ。


「ね、君、暇?」
ロキがその場に立っていたのは当然だ。
此処は神無伎町であり、ロキの求める人間の堕落と欲望が詰まっている。
人間の集まる場所はロキにとって獲物だらけの狩り場でもあり、その中を掻きまわすのは得意だった。これはもうライフワークと云ってもいい。
だからこそ快楽を求めて来る人間をロキは嘲りもしたし、また弄んだ。
それに此処にはロキの経営する非合法な悪魔絡みの店もある。
だからこの場所はロキの場所であった。
ミツルに声をかけたのは本当に偶然だった。
ましてミツルがあの『ミツル』だとはその時ロキは気付かなかったし、まさか本物だとは思わなかった。
思わず声をかけた。突然降りた天啓・・・というのは癪な表現だ。
云い換えよう、運命的な出会いに感じた。
だって凄く良い素材だ。ロキは人間らしい仕草で顔に笑みを張り付けながら今しがた擦れ違った男に駆け寄った。
「暇かな?時間ある?」
「え、と」
少し伺うようなミツルの態度は明らかにそういったことに慣れているという応対だった。
顔を見れば間違い無い。ロキでなくても相当声をかけられるタイプだろう。
モデルばりの身長と体型に、世間的には女性に好かれそうな、格好良いと云われるタイプの相当な二枚目だ。パーフェクト、これは好物件だ。声をかけないわけがなかった。
「キャッチですか?」
男の人なのに珍しいですね、とミツルは答えた。通常は女性にするものだ。
ごく稀にスカウトがスカウトしませんかと男に声をかけることもあるが、それ以外で思いつくのは芸能関係かホストの仕事の勧誘だった。
「すみませんけど俺未成年なんで」
「うそ、勿体無い!」
まじで?と思わずロキが訊き返せばミツルは学割の定期をみせた。確からしい。
「残念、でもコウコウセイには見られないでしょ?ウチで仕事とかどうかなぁ」
男でも女でも美形は大歓迎だ。ロキはこういう人材を求めていた。
この子を店に登録させればいいんじゃないかな、あ、この子直哉くんとか好きそうなタイプだよね、と考える。まさか直哉の弟だとはロキはその時想像すらしていなかったが、好みの点ではドンピシャだった。
流石にもう何千年かの付き合いがある腐れ縁である。後にこの件でロキが直哉をからかうのだがこの時はまだミツルが直哉の現世に於ける従弟でありその魂が直哉・・・つまりカインの弟であるとロキは知らなかった。
「簡単な仕事だし、話するだけってのもOK、あ、本番有りならバックも大きいよ、それに男もいける口ならもっと払うし」
値段によってロキの店ではできることが代わる。話すだけ、メールをするだけ、電話オンリー、食事もあればセックスもある。本番も入れば高級店なので相当ふっかけられた。
『至上の快楽から地獄の苦しみまで』がロキの店のモットーである。要するに金持ちから絞り取れるところまで絞ってはい終わり、なのだ。家庭と仕事を崩壊させるまでいけば上々である。店の子の半分は人の姿をした悪魔であるのでこの考えは至極悪魔的には当然であった。
「在籍してくれるだけでもいいからさぁ、どうかな?」
一目惚れと云っても良い。ミツルが入れば相当な上客が捕まえられるだろうしロキ自身ちょっとミツルを摘まんでみたいなという気持ちがあった。
ミツルは云われ慣れているのかロキのとんでもない勧誘に怯むことなく少し考えてから微笑んだ。
その微笑み方が意味深な感じでまたロキを煽る。
「すみません、お金でそういうこと遣り取りするのはしない主義なんで」
―振られた。あっさりしたミツルの態度に普段ならそれで諦めるところだが、珍しくロキは粘った。
このままこの子を帰すのは勿体無い気がしたのだ。
「じゃあ、ご飯だけでもどう?」
「それ仕事の勧誘ですか?」
「違うよ、プライベートで、どうかな?」
店の名刺とプライベートの連絡先を記載した名刺の両方をロキはスーツの内ポケットから取り出し、君ともう少し話したいな、と要望を伝えればミツルは一瞬考えてから、いいですよ、とロキの名刺を受け取った。どうせ今日は帰る気分ではなかったのだ。丁度良い。
ミツルに声をかけてきた男は明らかに欲望の影が見える。
本当なら初対面の人間とは寝ないのがミツルの主義だったが、なんとなく目の前の如何にもというスーツに身を包んだ男とは寝そうだなと思った。

「こういうお店は来るの?」
ロキが案内したのは個人経営のフレンチだ。
隠れた名店と云うべきか知る人ぞ知るという類の店である。
予約無しでは席も取れない店だが、ロキはこの店の常連であったし電話一本でいつでも入れるように個室をキープしていた。勿論誰とでも来るわけでは無い。
仮に目の前のミツルと名乗った未成年の彼がロキの店で働こうかなという素振りを見せたらお店の子と行く用のいわゆる接待用の店に連れて行こうと思っていた。
けれどもミツルは一筋縄ではいかなさそうだ。年の割に受け答えがしっかりしていて手強い。
それに本人がそういうのはしないと云っている以上どうしようもない。
しかしロキとの食事はOKした。
故にこれはプライベートである。
ロキ自身上手く説明が出来ないがミツルには不思議な魅力があった。
云うなれば天性の才能のようなものだ。だからこそ連れてきた店はロキがキープする中でも特にお気に入りの子としか来ない店だ。ロキは悪魔であるが人間の愛人も居る。
故にミツルをこの店に連れてきた時点で、ああ、この子をひょっとして自分の愛人にしたいのかもしれないとロキは自覚した。
それにわざわざフレンチに連れてきたのはミツル自身をロキが見定める為だ。
テーブルマナーが必要な場所に連れてきた時どうするのか、そういった細かいことを見極めるのにも役に立つ。
ロキの想像通りイメージに違うこと無くミツルは全てをきちんとマナーに沿って片付けた。
だからこういうお店には来るのか?とロキは質問したのだ。
「偶に来ます。それに以前こんな感じのお店でバイトしてたんで・・・って云っても知り合いのダイニングバーでしたけど」
物怖じしないのはその所為かとロキは理解した。
ミツルは品良くナイフとフォークを使い綺麗に皿の上に盛られた料理を片付けていく。
バイト先とやらが余程ランクの高い店で其処で勉強したのか、或いは元々家の躾が良いのかミツルの上品な食べ方はロキの好みに叶った。
「未成年なのに?」
酒を出す店で普通はバイトは出来ない。
見た目だけなら大人びていたがミツルはまだ未成年だ。
「知り合いなので」
さらっとミツルは悪びれもなく答えた。悪戯っぽい目がまたロキを煽る。
( いいな、この子、欲しいな )
「ねぇ、本音を云うとさ、あわよくば名前だけでも在籍してくれたらって思ってるんだけどね、それ以上にさ、君に興味あるなミツル君」
「名前を貸すだけならいいですけど、仕事はしませんよ、お金の遣り取りはしたくないので」
ミツルは綺麗に切りそろえられた鱸のポワレを口に運んだ。
ただ魚を租借するだけだというのにミツルは絵になる。
「『知り合い』にはいいのかな」
ロキはミツルにカマをかけてみた。ミツルの云う『知り合い』がただの知り合いなわけが無い。
掛けてもいいがミツルは複数の相手がいるタイプだ。しかも年上の。
「『知り合い』にも寄りますけど」
ミツルが答える。上手いはぐらかし方だ。
( 上手いな、この子 )とロキは思う。なんというか返事の仕方が絶妙だ。
相手に気を持たせすぎず上手いバランスでギリギリの危険な会話が出来る。
そういう頭の良い子は今時少ない。ましてこの容姿でそれは実に貴重だ。
「いいね、そういうの好きだよ、ねぇ、この後空いてない?近くにボクの家・・・まあ実際住んでいるわけじゃないんだけど、そういうのがあってね、どうかな?」
欲しい、食べてみたい。ミツルみたいな子とのセックスは楽しいだろうなとロキは思う。
だから少し本気だった。無理矢理奪うのは悪魔らしいがそれでは楽しく無い。
この駆け引きがいいのだ。ミツルはそういった意味でロキ好みだった。
「やめときます、俺、初対面の人とは寝ないんで」
ミツルが自分のスタンスを説明する。あっさりしたものだ。定型文である。
この言葉も云われ慣れているのだろうなとロキは確信した。
それでも尚このチャンスを惜しんだロキが食い下がろうとしたところでミツルの携帯が鳴った。
メールらしい。ミツルの表情が少しだけ変わったことからロキは、嗚呼無理かな、と思った。
このパターンに陥るともう駄目だろう。用事が入ったので終わり、だ。
しかしミツルは違ったらしい。ロキが「ごめんね、じゃあタクシー代出すから」と立ちあがろうとしたところで、今度はミツルがロキを引き留めた。
「すみません、さっきの撤回します、やっぱり今日泊めてくれませんか?」
ミツルの心境の変化は明らかにメールだ。内容まではロキにはわからないが、状況が変わったらしい。つまりミツルは「帰りたくない」とロキに云っているのだ。
実際ミツルに心境の変化を起こさせたのは直哉からのメールであった。
『今日はいつ帰る?』という内容が夕方の風呂場でのことをミツルに思い出させた。
いつもはそんなこと訊かない癖に訊いてくるということはこれでのこのこ帰れば
またミツルの貞操の危機である。意地でも直哉が待つ家に帰るわけには行かなかった。
「それはOKってことかな?」
「そうとって貰っていいです」
ロキにしてみれば棚から牡丹餅である。こんな美味しそうな子を放っておける訳が無い。
けれどもミツルは帰りたくないということをロキに訴えているのだ。決してセックスでは無い。
だから確認する必要があった。
「じゃあホテルにする?それともボクの家でいいかな?」
仮に此処でミツルがホテルにすると答えたらロキはミツルと少なくとも今日はセックスはしないつもりだった。
家に帰りたくない子を好きなだけ豪奢なホテルに泊めてあげて、それから店なりロキに対して個人的になり(個人的に、というのは勿論愛人だ)働いてくれるように促すつもりだ。
いわばミツルに対しての投資である。けれどもミツルの返答は違った。
「間口さんの家で」
間口とはロキの偽名だ。人間の姿を借りる以上人間の名前が居る。それだけだ。たいした意味も無い
名前だったがミツルに云われると、ぞわりとロキの胸が疼く気がした。
「オーケイ、じゃあ、デザートを食べたら行こうか」
欲望が確実に疼くのを感じながらロキは優雅にワインを傾けて見せた。


車を回させて停まったのはロキのキープしている物件の一つだ。
店から一番近い場所を選んだ。何処も似たような内装にしていたらから正直何処でも良い。
大差が無いのなら近い場所に限るだろう。
ゲートを抜けてエントランスを潜ってエレベーターで最上階へ。
長い廊下を進み一番奥の大きな扉を開ければ中はモデルハウスの写真そのままのような空間になっている。
夜景を見降ろすのが好きなので景色も良い。ロケーションはばっちりだった。
「良い部屋ですね」
「うん、気に云った?」
気に入ったのなら鍵を上げようか?と悪戯に問うてみるとミツルがまた意味深な笑みを零した。
それがまたそそられるから本当に上手い子だなぁとロキは感心する。
ロキは良く冷えたシャンパンを取り出し手際良く封を切って栓を開けてからそれを細めのシャンパングラスに注いだ。ついでに用意させておいたフルーツもカットしてミツルに差し出す。綺麗に盛るのはロキなりの美学だ。何事も綺麗に越したことは無い。
「器用ですね」
「セックスも器用だと思うよ、ボクは。一応念のために訊いておくけど男はこれが初めてじゃないよね?」
初めてならそれはそれで大変だ。気を遣う。嫌いでは無いが面倒に越したことはなかった。
ミツルとやりたいのは駆け引きのセックスであって調教の為でも殺して遊ぶ為でも無い。
ごく普通の肉欲的なセックスをロキはミツルに求めている。
「大丈夫です、初めてってわけじゃないんで」
「だろうね、君はどっちかな?」
続いて訊きたいことを質問する。確認はしておかないと後々不便である。
ちなみにロキはどちらでもイケる口だ。
「タチかネコかという意味なら俺どっちも大丈夫ですよ」
ミツルはロキが手ずから用意したオレンジを口に含んで綺麗に租借した。
矢張り租借する様が非常に絵になる。少々マニアックな嗜好かもしれないが、そういうのが綺麗な人間は意外と少ない。ミツルのそれは下半身にダイレクトに来る色気があった。
エロティックな美しさがある。
「シャワー借りますね」
ミツルは慣れた様子でバスルームの場所をロキに訊いて、下準備をしてくる様だった。
矢張り相当慣れている。年を訊けば十七だというから驚きである。
また若い肉体というのもロキには魅力的であった。
好みからして若い子供の場合大抵ロキが仕込む羽目になる。これはこれで嫌いでは無いが自分好みにするには暫く時間を要する。その点でミツルのようなタイプはロキにとって初めてである。
最初から自分の好みで十代の子に会ったのはこれが初めてだ。

程なくしてバスルームから出てきたミツルと入れ替わるようにロキもシャワーを浴びた。
直ぐにでもセックスをしたかったが、このもどかしい時間を楽しむだけの余裕はあるつもりだ。
ガウンを着てベッドルームへ向かえばミツルはベッドの上で携帯を弄っていた。
先程のメールの相手に返信でもしたのだろうか。しかしそれを探るのも野暮というものだろう。
少なくとも準備が整ったのだから今はミツルに触れたい。
「待った?」
「いいえ」
手慣れた受け答えをしながらミツルは携帯をサイドテーブルに置いた。
そんなミツルに喉を鳴らしながらロキはベッドに上がりミツルの身体を弄る。
胸から下肢にかけてをゆっくり舌と指で撫ぞり存分にその肉体を味わう。
矢張り極上だった。バランス良く付いたミツルの筋肉は若々しかったし、細身であるのに引き締まっている。
首筋、鎖骨、胸、なぞるように徐々に下に手を伸ばして下肢に触れればミツルのものが少し固くなっていた。
更にその奥にロキが指を入れればスムーズにミツルの中に触れられる。
矢張りミツルはバスルームで処理をしてきたようだった。
処理というのは勿論男同士で遣う場所の処理ということだ。
「初めてはいつだったの?」
「十五の時かな、相手は勿論年上でしたけど」
「ふうん、」
一旦言葉を切ってロキは広いベッドの上に横たえたミツルの身体をまじまじと眺めた。
ミツルは決して華奢では無い。ミツルの身体はあくまで男性的な魅力で包まれている。
それに高い身長に整った顔も加われば女ウケする肉体だ。けれどもミツルには不思議な魅力があった。万人受けする容姿も当然そうだったが、妙な色気がある。
「いいね、そういうの好きだよ」
ミツルの身体をゆっくりと弄りながらロキは確かな欲望を感じた。
再び指で中を掻きまわしながら胸を撫ぜればミツルの身体が跳ねる。
「っ・・・上手いですね」
「うん、上手いよ、君もだいぶ上手いと思うけど」
ミツルもロキも手慣れている。互いに気持ちの良い快楽を楽しめそうな相手だ。
セックスに相性もあるが慣れているかどうかも大事だ。
ミツルはロキの読み通り既に何人かの人間とセックスをしている。だからこそ特定の誰かの癖のようなものが無く、相手に合わせることが出来る様だった。
「んんっ」
鼻が抜けるような聲がミツルの口から漏れて感じているのだと知れる。
ロキは慣らさずとも既に準備されていたミツルの中に己を押し付けた。
「う、あっ・・・!」
流石にきついのかミツルが身じろぐ。それを追うようにロキがゆっくりとミツルが慣れるのを待ってから結合を深くしていけば、徐々に慣れたのか、ミツルは、は、と色っぽく息を吐いてロキの背に手を回した。
「ん、動いて・・・いいです、ッ」
やや掠れた聲でいうのがたまらない。ロキは笑みを深くしてミツルの身体を貪った。
一度二度と大きく突いてやればミツルの悲鳴があがる。決して痛みだけでは無い甘い悲鳴だ。
「いいね、ミツル君、凄い、」
ぎゅう、とミツルの中がロキの物を締める。ややきつい締まり具合にロキの物が絞られそうになるがかろうじて踏みとどまった。もう少し楽しみたい。勿論一度だけで済ますつもりはなかったがその一度をゆっくり楽しむというのも大事だ。
ぐ、ぐとミツルの綺麗な腰を掴んでロキが揺らせば気持ちいいのかミツルは顔を逸らした。
それから二人で何度も絶頂を目指してはやり過ごし、そして限界だと思った時に漸くロキが吐き出した。気持ちの良い放出だ。
ミツルもロキが自身を引き抜く時に前立腺に当たった所為か勢いよく到達する。
イク様もいい顔をするな、とロキは思う。
はあ、は、と息を洩らしながらも快適なミツルとのセックスにロキは目を細めた。
ゴムは一応している。勿論ミツルは男だから妊娠の心配も無いし、ロキは悪魔であるから病気の心配も無用だ。あくまでマナーとして装着しているものだ。
ミツルはロキがゴムを捨てるのを横目で見ながら、ベッド脇に置いたシャンパンを飲み干した。

「想像以上に良かった、まだ続きをしてもいいかな?」
「いいですよ、俺もそんな気分だし、」
ミツルの微笑にロキはこの子は魔性だな、と確信する。じゃなきゃ相当遊び上手だ。
江戸っ子的には粋とでも云うのだろうかとどうでもいい事を思いながらもこの魅力的な若者であるミツルをロキの愛人にする方法は無いか考える。
「結構本気なんだけど僕の愛人にならない?」
「間口さんが良い人ならね」
「ボクは良い人だと思うけど?」
「非合法のクラブを経営する人は『良い人』じゃないでしょ」
その通りだ。ミツルは駆け引きが上手い。そうして自分の値を吊り上げるのに長けている。
「君みたいな子には本命がいるのかな」
これはロキの勘だ。
恐らくミツルには本命がいるのではないかと思う。遊ぶわけでも自棄になるわけでも無く、なのに年齢にそぐわないほどミツルはセックスに慣れている。
非の打ちどころの無い人間などいない。これはロキの持論だ。
だからミツルには絶対に何か手に入らないものがある筈なのだ。
そしてそれは恐らく恋愛に関することの筈だ。これでミツルに本命がいないという方が不自然だ。
案の定ミツルはまたロキが好む意味深な笑みを浮かべて、答えた。
「 秘密 」
その意味深な云い方が正直たまらない。ミツルは人の気を持たせるのが上手すぎる。
ロキは背筋をぞくぞくさせながらもっとミツルと遊びたいと思う。
交わってどろどろになってぐちゃぐちゃになるほどの快楽をミツルと追い求めたい。
本当に気に入ったらミツルを悪魔の世界に引き込んで永遠を与えたっていい。
勿論これはまだミツルが誰の弟か知らないからだ。実際知って仕舞ってからはロキには手の出しようが無い存在にミツルが成るのだが、今のロキがそれを知る筈も無い。
「ね、次はどうする?俺がタチをやってもいいけど」
「んー、じゃやってみようかな」
物は試しだ。ロキは喉を鳴らしながらミツルとの快楽に溺れることにした。
ロキは交わったミツルの身体に夢中になり文字通り朝まで楽しんだ。
後に、ミツルがベルの王になった後、直哉との三角関係どころか或る意味多角形に陥るのだがその時直哉の怒りに触れたものの、実際の処あの直哉からロキへの仕返しは無かった。
直哉の性格からしてロキに復讐しそうなものであったが、ロキの意外な一言によってそれは複雑ながらも回避される。
「うん、ミツル君、凄くよかったよ・・・最終的に僕がネコ(受け)だったけど・・・」
これでは直哉がロキを言及できる筈も無かった。ミツルは想像を超えたテクニシャンである。


06:悪魔と踊る

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