「あ、う、、」
無理、そんなん無理、
絶対入れへん、
無理やて、
もう言葉は無理とか駄目とかそんなもので
埋め尽くされていて、
でも直哉はゆっくりとそのドでかいバズーカみたいな
ものを沈めてくる。
一般的なサイズかどうかなんてこの際どうでもいい、
少なくとも自分の決して広くは無いケツの××(ごめん云われへん)
に入れるにはドレッドノート級のバズーカであるのは
確かである。先生お注射して下さい、なんて云うには
デカすぎる、そして何で自分は兄である直哉にこんなことを
されているのか、直刀はパニックと快感と恐怖に
泣き声さえ漏らして止めてくれと懇願した。
声は啜り泣きに近い。
直哉はもう一度直刀に口付けてそして
最後まで直哉のものを沈めた。

痛みはある、
酷い痛みの筈だ。
でも直哉の舌の熱さに悲鳴も言葉も飲み込まれる、
そのくせ、直哉の縋るような何処か
追い詰められたような切ない胸の奥をぎゅ、と
掴まれるような赤い眼を向けられるとどうしようもなく直哉を
離してはいけない気がして、その放っておけば消えそうな兄を掴んでおきたくなって、
直刀は泣きながら直哉に手を伸ばした。
まるで甘えていると求めていると錯覚しそうな
仕草で、直哉は一瞬驚いたように目を見開きそして
直刀を掻き抱きながら腰を揺らした。
「・・・っいたい、、」
「わかってる、大丈夫だ」
「っ、ぅ・・・いややってゆった」
「泣くな」
なんでかわからないけれど直哉はその時
俺が居ると、そう云った。
俺が居る、俺が居る、お前の傍にずっと居る、
そう云われると不思議と落ち着いてきて、
それから直哉が揺さ振る度にじわじわと痛みとは別の感覚が襲ってくる。
浅いところから焦らすように深いところへ、抉るような強さで
引く時は弱く、それを小刻みにやられると
ぎしぎしとベッドが音を立てた。
「はっ、うあ、、、っ、アッ」
甲高い聲が上がる場所を直哉は集中的に揺らした。
それからもう一度深くえぐられた頃には直刀は互いの腹に擦られ
固くなった己自身を意図せずして再び吐き出して仕舞った。
その収縮に絞られるように直哉が中で弾ける。
暴発したような感覚にまた「噫」と聲を漏らせば、
中の直哉が元気を取り戻して、いやや、もう止めて、
と啼く弟の懇願を無視して、
「想像以上だ」
とそんな不埒な言葉まで吐いて
もう吐き出すものなんか薄くて勢いも無い直刀を無視して
直哉は何度も何度も直刀の中に熱いものを吐きだした。
抜かれる頃にはもう酷い有様で、
どろどろと直哉のものが穴から溢れ出す。
涙と涎と下半身は直哉と自分が吐き出したものでぐずぐずで、
直哉はそれを乱暴にシーツで拭いてから
少し待ってろ、と云って部屋を出た。

待ってろと云われて待てる筈も無く、
直刀は一瞬で意識を闇に落とした。
ブラックアウト、
気付いた頃にはもう次の日で、
シーツも汚れた身体も元通り、
直哉が途中シャワーに連れて行ってくれたのは
夢だと思ったけれど夢じゃなかった。
何もかも綺麗に片付けて、
ぼんやり寝返りを打つ力すらない身体を
どうにか動かしてなんだかもうわけがわからなくて
泣いた。聲なんてもう擦れて出ない。でも
涙は沢山出た。
怒りとかそんなんじゃない、吃驚したんだと思う。
自分でどう片付けていいのかわからなくて、
頭ん中ぐちゃぐちゃで、直哉が何を考えてそんなことを
したのかわからなくて、泣きながら携帯を見れば
直哉からメールで、済まなかった、と一言あった。
そのまま、また眠って、
途中直哉が様子を見に来たけれど寝た振りをして、
実際酷く疲れていて、直哉は黙って食事を机に置いて呉れた。
そして頭を撫でて部屋を出て行った。

そしてその次の日、
そのあたりになってくると少し落ち着いて、
でも直哉の顔なんか見られない。
何でこうなったのかはわからない、
従兄弟だから兄弟だから、男同士だから、
これはもう異常事態で、直哉がホモだろうがゲイだろうが
自分は気にしないだろう、でも対象が自分なんて思いもしなかった。
まさか自分になるなんて思いもしなかった。
幼いころから距離があった。
直哉とはずっと一定の距離だった。
自分には直哉という人間がそもそもよくわからなかったし、
世間の仲のいい兄弟とは明らかに違うし、
そして何処となく自分は直哉に嫌われているのだとも思っていた。
だから苦手意識のまま直哉と生活してそして直哉を置いて引っ越した。
それで終わりだと思っていたら突然の東京への引っ越し、
また一緒に暮らしだして、前と違うのは俺が16歳になって直哉は
社会人になったってところで、両親もいなかった、
二人きりの生活で、でも週の半分はいないような直哉だ。
直哉の世界に俺は絶対入れない、幼いころから漠然と在った印象だ。
直哉の世界に自分は数えられていないのだと思ってた。
だから前と同じ距離なのだとそう思っていた。
でも違ってた。
そうじゃなかった。
どうして、と云いたい。
でも云ったところで答えなんかあるのだろうか、
いつもみたいに宿題みたいに答えがある筈なんてない、
あったとしても普通の答えじゃないことは確かだ。

( 俺もう死にたい )
恥ずかしさで死んでしまえる。
マス掻いてて目撃されてよりにもよって兄貴にヤられてしもた。
それが恋愛ならまだいい、でもこれは恋愛ですらない、
恋も始まっていない。自分の兄貴と恋なんてキショいけど
でもそんなスタートラインにすら立っていないのにこうなって仕舞った。
( 女の子もまだやのに・・・ )
なんだかもう色んな壁を一気に飛びこしてこの世の果てに来て仕舞った気分だ。
もうこうなったら死ぬしかない、
直刀は徐に立ち上がり台所へと向かった。
直哉は家にはいないようだった。仕事を疎かにもできないのだろう。
それに安心して、台所で水を飲んでから
傍に在った包丁を握ってみる。
これで刺せば終わりだ。
呆気ない人生やった。
と思って包丁の刃をぼんやり眺めていた。
光に反射して刃はきらきら光る。
( きれいや )
それを見ていたら、ふと遠くへ行こうと思った。
直刀は手近な荷物を手に取り、財布を確認して
それから電車に飛び乗った。


ブラックアウトの後に
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