「あっ、く、あっ、あうっ!」 あれから大和は撫子を激しく求めだした。今までは大和の手が空いた時に毎日だったと思えば数日開いたりしたのだが、大地達の生存を明かしてからは大和は毎夜撫子を犯した。 大和はその夜も真っ直ぐに撫子の元へ戻った。 ほぼ撫子の部屋が大和の私室に成りつつある。勝手知ったる仕草で大和は結界とセキュリティを解き部屋の扉を開け戻るなり、撫子を壁に押し付けたまま行為に及んでいる。 拒むかと思ったがあの日以来撫子は大和に従順だった。 大和が求めれば答える。聲も恥ずかし気に抑えることはあったが、大和が望めば素直に嬌声をあげた。その様に以前のような憎しみは見られない。 大和は撫子の腰を掴み自身を押し付ける。受け入れることに慣れた撫子の中は大和を締め付けた。ぎゅう、と締め付ける撫子の中に思わず放って仕舞いそうになりどうにか大和は低く呻きそれをやり過ごす。 「ふぅ、あっ、あっ」 「イイか?撫子」 「あっ、う、大和、っ」 撫子は大和が丁寧に中を指でとろかして深く突いてやればどうにもできないと云わんばかりに涙を零す。 感じている自分に恥じ入っているのか、それとも耐えられない屈辱と羞恥なのか、 撫子のその様に大和はいつも煽られる。何もかも自制することが出来ない。 堪える様があまりにも扇情的であったから大和も辛かったが自身の剛直で撫子を追い詰めたくなる。達して仕舞えば終わりなのだから勿体無いといえばそうであった。だから辛くても大和は堪え、なるべく長い間撫子を追い詰めるように動く。 そして撫子が自分のものであると云う実感が欲しかった。 この瞬間、犯している間は少なくとも撫子の快楽は大和の物だ。 思えば初めて会った瞬間からそうだった。大和は撫子が欲しいと思った。 抗えない引力のようなものがあった。 欲しい。どうしても撫子を手にしたい。叶うなら幸せにしてやりたい。 そしていつまでも傍に置きたかった。 セックスに於いてもそうだ。撫子が望まない行為であるにせよ感じているのなら感じさせてやりたい。 以前のような酷い仕打ちを大和がしなくても撫子は死にはしない。 大地達が生きている限り彼は死を望みはしない。 それを想うと安堵する反面、大和は心臓を鷲掴みにされたような息苦しさを感じた。 「此処に欲しいか?撫子」 欲しがって欲しいと大和は想う。 撫子が本当は何一つ大和に求めていないのだと知っているから大和はせめて快楽の内では自分を求めて欲しかった。 酷い仕打ちだとわかっている。けれども止められない。撫子が自分のものだと安堵したい。そんな己の女々しさに大和は哂った。 腰を打ち付けるようにしてから引けば、それにさえ感じるのか撫子が息を漏らす。 はあ、はあ、と息を漏らし涙に濡れる顔で撫子は大和を見た。 「私が好きか」 「好きだよ」 大和は最中にいつも問う。 撫子は答える。「好きだ」と。 大和が好きだと撫子は答える。 真実だ。撫子は大和に惹かれ、好きになり、愛してさえいる。 男同士のそれが果たして愛なのか撫子にはよくわからない。けれどもこの想いに名を付けるのなら間違いなく愛だった。 けれども大和は決まって云う。 好きだと、答えた撫子の頬を優しく撫ぜながら、それを否定する。 「嘘だ。お前は私など愛してはいない」 それを云われる度に撫子は頭が真っ暗になる気がした。 好きだ。撫子は大和を許した。 大地達が生きていたのだからもういい。酷いことを沢山強いられたがそれも許せる。 殺すつもりだった自身の大和への恋情さえ、今は許せた。 最初は怖かった。大和を知るのが、大和に触れるのがずっと怖かった。 けれども今は違う。 大和に触れられる度に撫子の身体は歓び心は満たされる。 満たされるのに、その問いを繰り返される度に、撫子の想いは否定された。 それが辛くて撫子は必死に目の前の壁に縋る。 このままでは駄目になる。 何が?身体が? それともこの恋情が、この歪んだ関係が、駄目になるのか、もう限界だと撫子は悲鳴を上げた。 「あっ、う、あっ、大和、やまと!」 壁に押し付けられて大和に抉られる。足ががくがくしてもう立っていられない。 思わず崩れる足に撫子はびくびくと慄えた。 ともすると大和に押し付ける形になってまるで強請っているように見えて恥ずかしい。 「っ、いや、やだっ、んっ、あ、」 せめてベッドで、となんとか言葉を漏らしたが大和がそれを許さない。 「此処で、」 短く言葉を切られて、あとは大和の成すがままだった。 「ひあっ、うあっ」 思わぬ衝撃に撫子は達してしまう。後ろだけで簡単に達せる自分が居たたまれない。 壁を見れば撫子が放ったものが、つう、と伝っていた。 耐えられない。こんな羞恥に、耐えれる筈が無い。撫子は啼いた。 けれども大和の責め手は緩められず、激しくなる一方だ。 「こんなところで達して恥ずかしいか?撫子」 「っひ、あっ、ああっ」 恥ずかしいに決まっている。大和は撫子が頷くのを見ると満足そうに喉を鳴らした。 「欲しがって、強請るように腰を押し付けて、いやらしくなったな」 「い、云うな、あっ、」 わざと煽るように云う大和に余計に羞恥を煽られ感じてしまう自分が恥ずかしい。 消え入りたい程であるのに大和は撫子を解放してくれる気は無いようだった。 「こんな風にお前を犯す男が好きか?」 「あっ、う、あっ、」 あまりの刺激に答えられないでいる撫子に業を煮やしたのか大和は浅瀬で撫子の前立腺を刺激した。 瞬間、撫子の頭が真っ白になって、息が上手くできなくなる。 がくがくと膝が震え、上手く立つことも出来ない。限界まで苛められて其処を突かれれば駄目だった。 先程出したばかりだというのに固さを取り戻す自身の浅ましさに撫子は背筋が寒くなる。 「・・・っ、っ、あ、アッ!」 けれども突かれれば身体は大和の思うように反応して撫子はみるみる追い詰められた。 ひゅう、と啼く撫子の喉に唇を落としながら大和は再度問うた。 「好きか?」 「あっ、好き、好きだからっ、もうっ、ア!」 ぐい、と中を奥まで突かれ、撫子は再び絶頂を迎えた。恥ずかしい。恥ずかしくて死にそうだ。 こんなの、こんなことってない。今まではこうじゃなかった。けれども此処数日で作り変えられたように撫子は大和を求める。 先程よりも薄いそれは壁に擦り付けられるように零れた。汚したそれを見て撫子は立っていられない。 壁に手を付きながら崩れる撫子の腰を掴みながら大和は堪えていた自身を撫子に放った。 ずっと堪えていたそれは長く撫子の中に放たれる。解放した瞬間、ぐずぐずと崩れ落ちる撫子の其処からは大和の放ったものが溢れ、泡立ちすら見えて卑猥だった。 大和はぐったりとした撫子を抱え、添え付けの浴室に向かう。 湯はいつでも入れるように世話係に指示してあるので適温だった。 達した後の撫子は大人しい。半分夢現であるから当然であったが、大和はそれを浴槽の中で抱え抱きしめるのが好きだった。 其処には静寂がある。穏やかな、かつて撫子と談笑したような穏やかな時間が其処にはあった。 それは撫子が半分意識を手放しているから出来たことであったが、この瞬間だけは撫子も大和に何も云わない。 ただ疲労のままに大和に身を任せている。 大和は撫子を抱きしめ、匂いを覚えるように嗅ぎ、髪に口付ける。 愛されないのだと、身体も何もかも手に入れても撫子が大和に傅くのは大地達の為だ。 大和が大地達の生殺与奪権を握っているからだ。大和の意思ひとつでどうとでもなる命だと撫子は知っている。 これは愛では無い。愛されていると錯覚しそうになるがそれは嘘だ。 でもこの瞬間だけは本当だと大和は想いたい。 撫子が大和に全てを預け目を閉じて眠るこの瞬間だけが絶望の中にある大和にとって唯一の安らぎであった。 撫子は知らない。 大和に愛があるのだと知らない。 大和もまた知らなかった。 撫子が自身を愛しているなどとは思いもしなかった。 06:いつだって擦れ違う |
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