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※現代パラレル。マフィア神威×リーマン高杉
※作品の性質上、暴力描写や無理矢理、または一部猟奇的な描写などが含まれます。
15禁程度の描写にしておりますが、ご注意下さい。
またストーリー上で高杉が男女共不特定の相手と関係を持つなどの緩い描写が御座いますので苦手な方はご注意下さい。

その日は少し度を越して呑んでしまった。
仕事の帰りふらりと立ち寄ったバーのカウンターで飲んでいたら二つ向こうの席に座る客や奥の客ともどういうわけか盛りあがって仕舞いつい、呑みすぎて仕舞ったのだ。途中まずいまずいとは思いながらも大丈夫だと高を括っていた。
また自分の知り合いが誰もいないのも悪い。家までそう遠くは無いがこうなるのなら銀時でも誘っておけば良かったと思う。
ああ、駄目だなと思った時には既に身体が思うように動かず、今どこに立っているのかも高杉には怪しかった。
そもそも会計をしてバーを出たのかすら怪しい。
道端で誰かに聲をかけられ、大丈夫だと云うのも億劫で何やら返事をした気もするがそれさえも覚えていない。
不明になる意識の中激しく揺らされて何度か吐いた気もする。そして下肢に奔る痛みと熱にゆらされながら誰かに爪を立てた。
まるで地獄だった。吐いても吐いても収まらない上にとんでもないことを仕出かしてしまった気がする。
そして漸く我に返って酷い吐き気と頭痛の中気付けば其処は見知らぬ場所だった。
「・・・」
何処だ、此処は。
高杉は重い身体をどうにか起こしなんとか起き上がってみる。
起き上がろうとしたがぬめりに手を滑らせて床に頭を打ち付けて仕舞った。その上周囲の異臭が高杉の鼻を付く。
顔を顰めながら己の有様を確認すれば衣服は疾うに無く全裸である。
その上明らかに事後であろう様子に高杉はやってしまった、と些か頭を抱えたくなった。
周囲には撒き散らされたであろう白濁の残骸と胃から吐き出されたであろう吐瀉物が散らされていて眩暈がしそうだ。
そう今高杉はその只中に居るのだ。
( 最悪だ・・・ )
フローリングの端には水の入ったペットボトルが転がっているのでこの部屋の持ち主だか誰かが水は飲ませてくれたらしい。最中に何度か水をと口走った気もする。
が、どうにも高杉はそのあたりの記憶が空に成っていて一体どうして何故自分が此処に居るのかまるで覚えていないのだ。
とにかくやらかして仕舞った。
高杉は再び重い身体を起こし床に座る。
部屋が暗いので時間がわからない。
一体今は何時なのか、朝方なら良いが今日は休みでは無い。
昼前ならなんとかフレックスを消費させて誤魔化せるが午後ならば・・・そしてぐらぐらする頭で一層高杉は青褪めた。
今日は午後から大事な会議がある。慌てて衣服を探そうとあたりを見回せば高杉が脱いだであろうスーツのズボンとシャツが下着と共に吐瀉物にまみれていた。
それに絶望して状況を確認しようと汚れた床から顔をあげれば傍には大きくてそれなりに値が張りそうなソファがある。其処に目をやればどうにか無事らしい自身のスーツのジャケットと高杉自身が通勤に使っている鞄があった。
ジャケットだけが無事でも仕方ないが、この際衣服は此処の住人から拝借してとにかくこの酷い状態でも連絡しなければならない場所がある。まだ夜半ならタクシーを呼んで帰るし、朝ならば会社に連絡して午後から出勤させてもらう。もし午後なら・・・高杉は考えたくも無いことを放棄してとりあえずこの部屋に時計が見当たらないので自分の時計を探そうとあたりに目をやると視界の端に金属の光を見つけた。
あった。
ガラス製のサイドテーブルの下に転がっている。
その時計を拾い高杉は時刻を確認した。
デジタルで無いアナログの時計が指すのは四。数字の四だ。
十六時か四時か・・・朝の四時であることを高杉は一心に願った。
吐き気が込み上げてくるのをどうにかやり過ごして高杉は己の携帯を確認しようとソファにあるジャケットに手を伸ばす。しかし内ポケットに在る筈の携帯電話が無い。一瞬焦ったがソファとクッションの隙間に己の携帯が落ちているのを見つけて引っ張り出した。けれども漸く探し当てた携帯電話はうんともすんとも云わず何時の間にか電源が落ちている。それに気付いて高杉が慌てて電源を入れようとしたところで、風呂にでも入っていたのか湯気を立たせながら誰かが出てきた。
「あれ、起きたんだ?大丈夫?」
大丈夫と聲をかける相手に高杉は眼を瞠る。
これは何の冗談か、何の間違いか。
相手はタオルで長いらしい髪を拭いながら高杉に近付き高杉の手にある携帯電話をひょいと取り上げて仕舞う。
抗議の声のひとつも上げたいが高杉の頭は真っ白になっていた。
そう、下肢に奔る痛みと倦怠感にまたしても男にヤらせて仕舞ったのだとは思ったがまさか相手がこんな餓鬼だとは思わなかった。
餓鬼だ。
どうみたって十六、七、どんなに見積もっても二十歳だろう。
そんな餓鬼とやらかして仕舞った。
頭がずきずきする。部屋の匂いも酷い。酸っぱい匂いと濃いアルコールの混じった香り、とにかく酷い状態で、眩暈がする。
相手は子供だ。道理で甲斐甲斐しさの欠片も無い放置の仕方であるわけだ。
「昨日のこと覚えてる?」
俺があんたを拾ったんだけどさぁ。と言葉を足す子供は高杉の携帯電話を背後のダイニングテーブルに置いて仕舞う。もうそれはいい。とにかくなんでもいいからこの状態から脱せなければならない。高杉はどうにか痛む頭を振りながら「水」とだけ要求した。
「あ、冷たいのがいいの?」
フローリングに転がっているペットボトルの水は既にぬるい。
冷えた物が欲しいと高杉が伝えればあっさりと餓鬼は冷蔵庫から新しい水の入ったペットボトルを投げて寄越した。
そのペットボトルですら上手く受け取ることが出来ずに高杉はペットボトルを取り落して仕舞う。
「やれやれ、こりゃ全部俺が面倒みないと駄目かな」
癪だが餓鬼にキャップを開けられ冷たい水を口に流し込まれればどうにか少しマシな気分になる。
「携帯・・・寄越せ・・・」
立ち上がろうとするがそれも上手く出来ない。
よろめく高杉を見て餓鬼の口が弧を描いている。
性格の悪そうなその笑みに高杉は昨日誘い損ねた旧知の白髪を思い出した。
こいつはあいつと同じような匂いがする。
とにかく早々に退散しようと立ち上がろうとするが身体が上手く動かない。一刻も早くこの吐瀉物の海からもこの相手からも退散したいのが本音だ。酷い有様ではあると思うがこの手のまずさは高杉とて理解しているつもりだ。
「帰る」
かえる、と譫言のように云えば「無理だ」と言葉を返される。
「無理だよ、あんた、まだ動ける状態じゃないし、」
仕方ないとその子供が高杉に近付き、軽々と汚物にまみれた高杉を抱き上げた。
驚いたのは高杉だ。自分はそんなに軽かったかと疑問に思うがそんなわけない。
その高杉をこの子供は羽でも抱えるかのように持ち上げている。けれどもその疑問を高杉は口にするのも辛かった。
頭痛は酷くなるばかりで高杉がたまらずその子供の首に顔を埋めたところで玄関らしき場所の扉が開いた。
「団長ー・・・って拾いものってそれかよ」
呆れたように聲をあげる男は大人の様で、そこで高杉はまた我に返った。吐き気に呑まれている場合では無い。子供の腕から逃れようと再び「帰る」と高杉が要望を口にする。男にも聞こえるように。いくらこの状況が無様でもこの子供と自分だけの状態より事態は改善するだろう。
けれども男の反応は一切無い、男は高杉を一瞥すると直ぐ様部屋の惨状を見て溜息を吐いた。
「あー・・・やってくれちゃって、てめぇはそいつを風呂にでも入れてこい、若い奴に掃除させるからそれまで出てくんな」
ぴしゃりと云い放つ男に、餓鬼が笑って高杉を軽々と風呂場へ運んでしまう。
その風呂場でおよそ人を洗うような手つきでないような乱暴な扱いで子供に隅々まで身体を綺麗にされ、吐き気を催しながら碌な抵抗も出来ずに高杉は再びその餓鬼に頂かれた。
「・・・っ、やめろ・・・」
嫌だ、やめろと、ぬるい湯の中で高杉が漏らせば子供は楽しそうに目を細める。
ぐらぐらする。頭が痛い。きもちわるい。
なのに餓鬼の手は止まらない。
あっと云う間に足を割り開かれて湯の中で揺らされた。
死ぬ、とさえ思ったほどだ。苦しさのあまり無様に泣いたかもしれない。
何かを子供が云って高杉はそれに応じた気もする。
けれどもそこから先の意識はまたぷつんと途切れて仕舞った。

「・・・最悪だ・・・」
次に気付けばその翌日だ。もし昨日見た時計が夕方の四時だとしたら明らかに窓から差し込む陽の光からしてどう考えても今は朝か昼だ。高杉の計算が正しければまる二日会社を無断欠勤していることになる。
一日で済みますようにと、まだ無駄なあがきを高杉は思いながらどうにかまともになってきた頭をフルに回転させた。
どうやら昨日も風呂で散々やって仕舞ったらしく、それが更に高杉を後悔の渦にのみ込んでいく。
駄目だ。考えては駄目だ。
一刻も早くこの状態を清算しよう。
そしてもう二度と酒は飲むまい。
見れば昨日とは違う部屋だ。奥の部屋だろうか、巨大なベッドがあるのみの簡素な部屋。広い窓に重たいカーテンが張られている。
衣服は相変わらず無く裸だが酔いは醒めよく寝た所為か頭はすっきりとしている。胃が空なので気分は悪かったが漸く動けるようになったので高杉はとにかくその部屋を出ようとした。服は悪いがクリーニングに出してもらうか処分してもらってとにかく餓鬼の服でもいいから借りて此処を出る。
そうしよう。と申し訳程度にかけられていたケットを頭から被りドアを開ければ部屋の前に見知らぬ男が座っていた。
「わりぃが、服あるか?」
おはようございます、と男は云う。昨日の男とは違うようだ。
「迷惑をかけて悪いな、帰るから服と俺の携帯返して欲しいんだが・・・」
ごく普通の事を頼んでいるつもりだ。
けれども言葉が通じないのか、男は黙ったままドアの前から退きもしない。
痺れを切らして高杉がもう一度要求を述べようとした時に「無駄だよ」と聲がかかった。
「てめぇは・・・」
そうあの餓鬼だ。
思い出したくも無いがここ一日だか二日だか散々交わった餓鬼。
「あんたは俺のものにしたのさ、だからずっと此処にいるんだ」
何を、云っているのか。
頭が真っ白になる。
けれども餓鬼は云う。にこにこと笑みを浮かべながら。その背後には昨日の男も居た。
嫌な予感だ。
これはまずい。
もしかして自分は物凄くまずい処に居るんじゃないだろうか。
だってまともじゃない。
どう見たって此処ではこの餓鬼が一番でかい面をしている。
この餓鬼に皆従っている。
ところどころ飛び交う聞き慣れ無い異国の言葉に高杉は眩暈がした。
「あんたは此処に居るんだ、タカスギシンスケ」

「俺は神威、あんたの飼い主さ」
何時の間に探ったのか、高杉の名刺を取出し神威は哂った。
神威と名乗った餓鬼は茫然とする高杉を引き寄せ口付ける。
「絶対逃がさないよ」
ああ、くらくらする。
再び込み上げる吐き気と酷い眩暈に高杉は溜息を吐きながら目の前の子供をどう諌めるか頭を抱えた。


01:酒は飲んでものまれるな
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