※魔王ルートED後。「午前2時の闘い」続き。


「高くつくぞ、羅刹」
という言葉に嫌な予感はしていた。
だがしかし、それもこれも勝つ為である。
仕方ない、直哉のことだから何をするのかある程度予測は
していたけれど、半ば借金を肩代わりしてもらって身売りした
ような気分に成った。

( ってかこれ完全身売りじゃん! )

事実である。
直哉ははっきり云って性格が悪い。
悪いなんてもんじゃない。どのくらい生きているのか
知らないけれど見た目通りの年齢でないのは確かだ。
そのくせ妙なところで生真面目で、純粋なところがあって
そういうのが発揮されるのは大抵恋愛関係なのだが、
プレイ内容と直哉との恋愛の駆け引きに多いに
溝があるのも確かであった。
( マニアックなのと、純粋さが混在してんだよな、こいつ )
文字通りそうなのである。
人には言えないようなことまでしてるクセに妙なところで
キスをして欲しがったり、縋ってきたり、好きだと、
羅刹が云わないと拗ねることだってある。
ガキである。
恐らく、これは羅刹から見た心象であるが、直哉は恋愛面において
酷く初心者なのだと思う。それが図星かどうかはわからないが
どうせ今までの直哉のことだ、生き方を考えるに恋愛はさせるもので
あってするものではなかったのであろう、故に人に焦がれるということを
知らなかった男なのだ。
だからこそ直哉は羅刹に対してだけ必死になるし、決して
あの時云ったように、その手を離そうとはしない。
それが羅刹にとっては心地良かった。
気分がいい。今まで散々人をコケにしていて、道具にしか思ってなくて
弄んで、蔑んで、痛めつけていたあの直哉が、だ。
分かり合えたのが何より一番うれしいと云えばそうだった。
だからこそ直哉との駆け引きもセックスも羅刹なりに楽しんでいる。
大抵の要求も呑んだつもりだ(縛りとか)
でも、

「おい・・・」

連れてこられたのは鏡貼りの部屋だ。
以前はスポーツジムだった場所である。
今は隅っこの方に機材を押しやっているようだ。
恐らく悪魔達が物珍しさに触ってみたものの用途が
理解できずに端へ押しやったのだろう。
それなりに広い空きスペースがあった。
「なんだこのマニアックなチョイスは・・・」
「鏡の前は男のロマンだろう」
「俺でロマンを追及するな莫迦」
この莫迦!と叫び出す羅刹を他所に直哉はいそいそと縄を
取りだし器用に羅刹を縛っていく。
「おい、直哉・・・!」
「10憶」
う、耳がいたい・・・。
「俺がお前の借金をチャラにしてやったんだろうが」
「それとこれとじゃ・・・!」
割に合わない、と云おうとしたが直哉の赤い目が有無を言わせない。
下手に云うとより酷くされそうな感じだ。
圧倒的な己の不利、その上一応悪いことをしたという自覚もある。
(無尽蔵に国庫を使い尽くすところだった)しかしお仕置きというには
あんまりじゃないか、
「な、なあ、直哉、俺がやってやるから・・・」
特別大サービス、ご奉仕してやると云えば直哉は少し留飲を下げたようで
「ほう?」と挑発的な笑みを漏らした。
縛られたままじゃ上手くジッパーを下せないから解いて、と云えば、
直哉は少し意地悪そうに眼を細めた。
「口があるだろう?」
くそ、こういうところだけはドSだ。
(ちなみに俺は直哉は精神的にはMだと思ってる。じゃなきゃこんな性格にはならない)
舌打ちしながらそれでも仕方無い、このまま鏡の前で自由を奪われてヤられる屈辱より遥かにマシだ。
羅刹はゆっくりと屈みこんで直哉の股ぐらのチャックまで身体を伸ばし云われた通り
歯でジッパーを噛んで降ろした。
上手く降りなくて途中で唇を舐めれば金属特有の不味い味がする。
「出せない」
なんとかジッパーを降ろしても下着を履かれていてはどうにもできない。
直哉は心得ているのか下着をずらして器用に己のものを取りだした。
毎日というほど見慣れているものだがこうして改めて見ると
恥ずかしいものである。
全く何がどうなって男に、しかも従兄弟に、その上魂レヴェルではどうやら
兄貴らしい男に掘られなければならないのか。
その癖自分はそれを気持ちいいと思っているのだ。
もう情けないやら自分のナニが可哀想な気にもなる。
(何せ女に使う予定が見当たらない)
まあ一つだけ慰めになるとすれば直哉が美形だってことだ。
顔だけはずばぬけていい、流石人類二番目の男子、そのあたりは神様の趣味が
良かった、ってことだろう。
人間離れした完成された彫刻のような美貌は羅刹の容姿とも違った
美しさだ。(モチロン、自分がキレーとも思わねぇけど・・・)
最初は無理矢理だったが今は自ら進んでこうしたことをしているような仲なのだ。
不本意であるが仕方無い。
羅刹は目を閉じ観念したように直哉のものを口に含んだ。
ゆっくりと焦らすように、或いはねっとりと舐めるようにすれば
直ぐに硬くなった。
じゅぷ、と唾液と先走りが混ざったものが直哉のものと一緒に口内に
溢れる、じゅるじゅると吸ってやると頭上の直哉がびくり、と慄えた。
「っ、お前は・・・」
呆れたような聲に顔をあげる。
「ナニ?なんか悪かった?」
にやりと口角を上げて挑発すれば直哉は観念したように目を閉じた。
「正直に上手い、な」
何処で覚えたんだか、と呆れたように哂う直哉に
羅刹は「お前だよ」と笑った。
「ほら、飲んでやるからとっとと出せ」
機嫌が良くなった、気が向いた、後で来る羞恥は適当にごまかせるだろう、
だから今日はサービス、と直哉の起立したものを一気に追い上げる。
ちろちろと遠慮がちに舐めた後、一気にじゅる、と最後の一滴まで絞るようにすれば
直哉が吐き出した。
毎日あれだけやっているのだから溜まっているわけでもない、
さら、としたそれをごくりと飲み干して(全く何を飲んでいるんだか俺は、)
顔をあげれば、直哉がぽん、ぽん、と羅刹の背を撫ぜた。
「はい、これで終わり」
「と云うわけにはいかんだろうが、羅刹」
有耶無耶に終わらせようとしたがやっぱり駄目らしい。
直哉の云う『お仕置き』は続行のようだ。
「お前は身体に覚えさせないといかんようだからな」
「憶えたって、もう賭博麻雀なんかしねぇよ、しないって絶対!」
「さてどうだか」
身体をひっくり返されて後ろ手に縛られてるから抵抗なんて出来る筈も無い。
まだ縛られていない下肢のズボンを下着ごと引き剥がされて、
後はもうなし崩しだ。
「見んなよ」
緩く勃ってるのはご愛敬だばか。
あんなの舐めたら少しくらい興奮するに決まってる。
直哉は少し羅刹のものを凝視してから気を取り直すように哂い、そして
脚を持ち上げた。
「っく、」
行き成り直哉が緩く勃ちあがった羅刹のものを口に含む。
兄弟でナニペッティング大会してるんだかもうわけがわからない。
くそ、と思いながらも身体は正直でどんどん直哉のエロい舌に追い立てられていく。
「、ッ!!!」
びく、と慄えて出しそうになるのをどうにか堪える。
簡単に出すと直哉は性格がヒジョーに悪いので徹底的に嬲る可能性があるからだ。
すっかりそんなことさえ覚えて仕舞った身体を恨めしく思いながらも
どうにか衝動をやり過ごす。
直哉はそんな風に堪える羅刹を満足そうに見下ろしてから
慣れた手つきでケツの穴に指を突っ込み始める。
指くらいならなんなく呑みこんで仕舞うのは毎日の賜物である。
(認めたくないけど!)
継続は力なりって誰が云ったのか全くその通りだ(認めたくないけど!)
唾液と我慢汁(!)が漏れたのと、混ざったものとを指に擦りつけられて内壁の
いいところを掠れば駄目だった。
堪え切れない快楽が襲ってくる。
直哉は恋愛の駆け引きを抜けば基本的に要領のいい男だ。
羅刹の弱いところなどとっくにお見通しである。
「あっ、」耐えきれず聲を漏らせば直哉が眼を細めた。
その眼が好きだ。
赤い眼、あかい綺麗な眼、子供の時あの眼がいい、と祖父に
駄々をこねたことがあった。直哉の眼や髪が普通と違うのは先天異常だと教えられた。
幸いにも虚弱と云われる類の症状は直哉には無く髪と眼と透き通るような肌を
覗いては健康そのものだった。今にして思うと直哉はずっとこの容姿のまま
生まれ死んで生きていたのだ。人類で最初に生まれた時の姿のまま
繰り返しているのだろうと思う。
白髪に近い銀の髪に射るような赤い眼の男、この男が自分のものなのだと
思うと羅刹はたまらなくなる。
にゅる、と直哉が入ってきた。
背後から抱えられるようにして、シャツを着たまま縛られて、情けない姿の
筈なのに眼の前の鏡に己の痴態を見せられれば厭が応にも羞恥を煽られる。
直哉に、兄であるこの男に抱かれ貫かれこんな醜態を曝け出して、
死にたくなるほどの屈辱であるのに、酷く心地良い、それを認めたくなくて
「やめろって、、」
嫌だ、と身を捩るがそれを許すような兄では無かった。
直哉は目敏く見付けた既に硬く成っている羅刹の胸の突起をシャツ越しに
こりこりと意地悪く擦れば思わず吐息が漏れた。
緩く、いつもの激しいものではない、緩い背後からの揺さぶりに煽られながら
不意に直哉が低い聲で「羅刹」と呼んだ。
「・・・っ!!!」
不意打ちだ。これは完全に不意打ちだ。
呼ばれた瞬間、身体がかっと熱く成って、暴発した。
締め付けた直哉が痛そうに眉を顰める。
「や、ちが、ちょ、油断したっつーか・・・」
しどろもどろ何に云い訳しているのかよくわからないが多分男の沽券的な
意味合いで云い訳をする羅刹に直哉は珍しく優しい笑みを洩らし
眼の前の鏡を指した。
「・・・」
鏡には見事に羅刹の暴発したそれがかかっていて既に重力に従い
流れて線を作っている。正直見るのも恥ずかしい。
「云いたいことわかるな」
「このっ、変態・・・!」
何を云いたいのかわかるよな?
つまりあれだ、直哉は自分で出したものを舐めて掃除しろって
云ってるんだ。わかるだけにもう泣きそうだ。
けれどもまだ中にある直哉が挑発するように身体を揺らせばまた
煽られる。
「どうしても?」振り返り懇願してみるが
直哉はエロエロ鬼畜スイッチが入ったのか拒否権は無いらしい。
拒否したらナニされるのかわからない。
だから仕方なく、だ。
仕方なく、決してこの雰囲気に流されて、とかエロい気分になって
とかじゃないぞ、仕方なく俺は鏡にかかった己の出した汁を
ぺろりと舐めた。
最初はおずおずと、揺さぶられながら徐々に大胆に。
背後からは揺さぶる直哉、鏡には己のものを舐める自分。
まるで鏡の中の自分にキスしてるみたいな気分だ。
あとはがんがん突かれて、わけがわからないまま
鏡を涎まみれにして、
「アッ、、く、あッ、、!!」
また吐き出した。
じゅくじゅくと下肢がむず痒い。
腹のあたりが酷く熱い直哉が動く度に尻の隙間から
直哉の吐き出したものがどぷりと溢れた。
「羅刹、」
「も、やだって、」
駄目だ、と後ろから抱きすくめられれば駄目だった。
許してしまうなんて俺も相当どうかしているらしい。
追い立てられて果てれば休憩して、
そんでからまた直哉にもってかれて、
苦しいから縄を解いてと懇願して漸く外された。
そしてまた散々中を嬲られて、直哉のお仕置きは終了した。

ぼお、とする。
( なにしてんだか・・・ )
莫迦なのはわかってる。
直哉と夜中こんなところで莫迦みたいにセックスして、
かつては此処はスポーツジムで、そんな名残が十分に残るこの場所で。
( 莫迦みてぇ、 )
セックスとかそういうの抜きで。
自分も直哉も随分遠くまで来て仕舞った。
篤郎だってそう、カイドーだって、マリ先生だってそうだ。
皆、かつて在った場所から遥かに遠い場所へ来て仕舞った。
自分はと云えば魔王に成って仕舞って、特に世間一般で云われているような
(例えば週刊誌やニュースで云われているような内容の)魔王らしいことは
していなくて、どっちかと云えば前とあまり変わらず好き勝手しているという
自覚はある。でもその気になればこの力で世界を滅ぼすこともそしてまた
造ることも、或いはきっとそれとは違うこともできるのだろう。
直哉は相変わらず気難しくて、セックスはマニアックで、
俺が莫迦をやったらやっぱり後始末をしてくれる兄貴で、
そしてアベルでも無い、他の誰でも無い俺を選んでいて、
そして俺はそんな直哉を

( これを幸せと云えば俺は恨まれるだろうか )

この世界をこうして仕舞った代償に人類に裏切り者と云われ、
蔑まれ、あらゆる批難を浴びて、俺はそれでいい、
それでもいい、そんなことは問題では無い。
けれどこれを幸せと云えるのは自分が人でない何かになって仕舞ったからだ。

( 神サマがお前を赦さないのなら )

俺が赦す、
俺がお前の何もかもを赦す、
何も言わないお前を、それでも赦して生きていく。

「直哉、」
水を取りに行っていた直哉が戻った。
身体はへとへとで、おまけに汗臭いわ、互いのなんだかわからない液まみれだわで
気持ち悪い。
起こして、と云えば直哉は快く起こしてくれた。
「キス、してよ」
無性に今欲しかった。
直哉は唐突に云ったことが意外だったのか少し目を見開いた。
「キス?」
「そう、熱いの、ぶちゅーって、」
なんだ、それ、と可笑しそうに顔を歪めて、
でも直哉は俺がそう云えば絶対にそうしてくれる。
この上なく大切そうにお前は俺に口付ける。
ゆっくりとその長い指を髪に通す、互いの指を絡める、
愛おしむように額をつける、
そして
祈るように口付ける。

「『お仕置き』は終わり?」
「ああ」
噫、と直哉はゆっくり笑う。
「じゃあこれは?」
直哉の手は既に俺の別の場所を弄っていて
明らかに意図された動きだ。
「今からは互いの愛を確かめ合う時間だ」
その言葉に俺は笑って仕舞った。

なあ、ゆっくりでいい、お前のその深い闇を
その孤独を俺が溶かしていけたらいいと思う。
永い時間、途方もなく永い時間孤独を運命づけられたお前と
歩いて行きたい。
手を繋いで、離さずに、お互いの温もりを感じながら、
目指すは闇の無い
目指すのは


光射すその世界へ
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