※普段と違ってヤリ○ン団長。 どちらかというと神威は性的衝動に正直な方だ。 それに夜兎は性的なことに早い方である。他種族と比べると寿命がそれほど長くないことも一因にある。 そもそも神威の師である男が夜王などと云われたこともこれが一因である。下品な云い方であるが、その通りなのだ。 神威もその関係で性的衝動を覚えてから直ぐに師に女を宛がわれた。残念なのは他種族の女とでは種族間の因子の問題で子供が出来にくい上に弱体化する傾向にあるのであまり歓迎されたことでは無かったが、それでも衝動はあるので神威も他の夜兎に違わずその衝動を散らす為に行為に耽る。 それは酷く義務的なことだ。春雨という組織に入ってからは接待でもそういったことが多い。 任務の待ち時間に宛がわれた女達を抱く。 単純に衝動で、気が昂っていれば相手を殺すこともあったが、それさえも神威にとってはどうでもいいことだった。 女が居れば犯す。気に入らなければ殺す。 神威にとってそれは酷くシンプルであり、何の感慨も無い。 本能的にそうしたいかどうかだけだった。 ( なのに・・・ ) 神威は頭を抱えた。 どういうことだ。 これはどういうことなのか。 ( なんで・・・ ) 目の前には男だ。男。 しかも地球とかいう辺境の星の蛮族の男。 侍だとかいう戦闘集団の長。 高杉晋助だ。 「これ・・・一体・・・」 「うるせぇよ」 頭を抱える神威を他所に高杉はのんびりとした動作で懐に仕舞ってあった、携帯用の煙管を取出し葉を詰め火を灯す。 おざなりに敷かれた布団の上で、何があったのかなんて一目見ればわかるようなこの場所で。 神威の動揺を他所に高杉は酷く落ち着いていた。その一連の動作に艶気があっていけない。 露わになった背に、黒い濡れ羽の髪、気怠げな視線、その全てにムラっとして仕舞っていけなかった。 ( 何で寝たんだっけ・・・ ) そもそも其処である。 漸く昨日のことをぼんやり神威は思い出した。 確かこの男と今後のことを詰める為に酒の席があった。 最初は地球でとも云われたがわざわざ地球に降りるのも面倒だったので高杉の旗艦での会談だ。 故に接待に女が居るわけでも無く、神威は純粋な興味で高杉と酒を交わした。 これほど他人に興味を持ったのは珍しいのでその興奮もある。 何せ高杉は神威に鮮烈な印象をもたらした。 阿呆元提督によって処刑される筈だった神威を土壇場で助けたのは高杉である。 あの状況で、確かに神威だけでは助かる見込みは五分だっただろう。下手をすれば本当に死んでいた。けれどもあの状況下で神威に手を貸した高杉も相当狂ってる。 あの時、高杉が神威の枷を切った時、この男に芯まで痺れたのは事実だ。 そしてその高杉に誘われて酒を呑み・・・そうだ、ふとした瞬間衝動を覚えた。 ついヤりたくなったから、ヤった。 押し倒したのは神威でそれを受け入れたのは高杉だ。 ( マジか・・・ ) ヤっちゃった・・・。 事後である。 ありありと思い出して来る昨夜の記憶に神威は眩暈がしそうになった。 戦場ではままあることだ。 神威とて長く戦場が続いて女日照りだったらその辺の弱いのを捕まえて穴を使うことがある。 夜兎の世界は強い者が総てだ。常にその序列の君臨する側に属してきた神威にとっては当然のことだ。 あまり好きではなかったが、こうなれば女も男も同じである。とにかく穴に突っ込んで吐き出す。 まだ子供がいない神威だが、犯して子供が出来るのが女で、出来ないのが男、という程度の認識しかない。 女の柔らかさと男では比べ物にならないが、どちらかというと確りした体付きの女を好む神威からすれば、それほど大きな差は無かった。 しかし、高杉だ。 これでヤったと腹心の阿伏兎にでも云えば使い心地はどうだったと冗談交じりに問われそうなものだったが、これが不味い。 ( 洒落にならない・・・ ) だって・・・。 ( 滅茶苦茶ヨかった・・・ ) 有り得ない、有り得ないことだが、なんというかこの高杉という男、慣れているのか凄かった。 今までの神威の性経験など吹っ飛ぶくらい凄かった。 ( 気持ちいーし・・・すっごいエロいし・・・ ) 最中に『さっさと済ませろよ、餓鬼』なんて低い聲で云われて、思わずそれで吐き出して。 通常なら有り得ない。神威が翻弄されるなど一度も無い。 昔師匠に宛がわれたとびきりの女でさえ、これほどの心地良さを感じたことは無かった。 昇天するとはこのことだ。 ( それとも高杉が手管が凄いとか、名器だとか・・・或いは俺との相性がイイとか・・・ ) 思いつく限りの可能性を神威は考える。 駄目だ。 どう考えても否定出来ない気持ち良さだった。 あ、思い出したらまた勃ちそう。 これを知ったら今までのセックスなど全部ままごとに過ぎない。 ぼー、と高杉に見惚れていると、高杉が目線だけを神威に投げる。 その動きさえ神威にとっては極上なのだから堪らない。 下肢にダイレクトにクるぞくぞくとした感覚に、脳髄までイかれてしまいそうだ。 「んだよ、エロ餓鬼」 だらしのねぇ顔しやがって、と云われて更に腰が慄えた。 咄嗟に高杉の腕を掴み再び圧し掛かる。 「ね、まだ足りない」 「散々シただろうが」 「もっと、シたい」 正直に要求すれば呆れたように高杉が息を吐く。 煙管から出る煙が神威に吹きかけられるがそれも気にならなかった。 湧き立つ色香がこの男にはある。 それは神威が今までに感じたことの無い欲だ。 逆に云えばこの男は神威以外にも男を受け入れたことがあると証明していて、それを想うと腹が立つ。 ちくり、と怒りがざわざわとする感じ。 「俺以外は受け入れられないくらい、俺専用にしてあげる」 にやりと神威が挑戦的に云えば、高杉の手が神威の頭を掴んだ。 予想してない速さで来たので逃げられない。 ぐい、と高杉に髪を掴まれて、睨まれる。 「ざけんなよ、クソ餓鬼、それを決めるのは俺だ」 ( ああ、堪らない・・・ ) ぞくぞくする、この気の強さ、脆弱な種の癖して、挙句高杉は男だ。 なのに堪らない。 神威を、この神威を挑発して、虜にするこの男が堪らない。 最高だ。 衝動のままに食らいつこうとすれば刀で制される。 その刀を握って、血が滴っても構うものか。 目を見開いて、狂気のままに、神威が笑みを浮かべれば高杉が哂った。 「いい面してやがる」 高杉が刀を退く。 ぶん、と振れば神威の血が畳へと払われた。 そしてゆるりと立ち上がって衣服を身に着ける。 「てめぇがイイ子にしてりゃ、また抱かせてやるよ」 傲慢な物言い。 不遜な態度、頭の天辺から爪先までそれに痺れてる。 神威はにやりと笑い、そしてその欲を隠しもせずに、男に噛みつくように口付けた。 * 「まさかの大穴たぁな・・・」 呆れた様子で背後から神威を追ってくるのは腹心の阿伏兎だ。 第七師団の己の旗艦に戻るや否や神威の上機嫌に阿伏兎は訝しげに問う。 「俺もまさか本命がこんなところに居るなんて思ってもみなかった」 「相手は男だろうがよ、馬鹿なの?莫迦か」 阿伏兎の揶揄さえ神威には気にならない。 ああ、ぞくぞくする、堪らない。 あの身体を組み敷いて、犯して、犯しぬいて己だけだと懇願させてやる。 主導権を取られたなど初めてだ。 だからこそ堪らないのか、あの男に惹かれるのか。 「絶対に俺の物にする」 思えば初めに遭った時から決まっていたのだ。 あの時、春雨のあの場所で、擦れ違った瞬間から。 「俺のものだ」 14:丁か半かの火花舞う |
お題「依存症」 |
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