※連作の方の設定に乗っているので神威が童貞だった設定です。


神威との行為はとにかく高杉を疲弊させた。
何せ相手は夜兎であったし、しかも最悪なことに神威の初めての相手が高杉である。
何が初めてかってナニの話である。
高杉は最初こそ嫌がったが、力で来られてはどうにもならないことも理解していたし、そんな神威をあしらうのは簡単だったが、そのうちこうなるのだろうという諦めもまた高杉の心中にあった。
三度目の褥でこの行為を一夜の過ちとして神威は流すつもりが無いのだと理解してから、徹底的に神威を躾けたのも高杉である。
自分で褥の作法を仕込んでこうして夜毎に責められるのだから自業自得と云うか、なんとも云えない。
なんとも云えないが、鬼兵隊と第七師団の関係上今離れるのも面白くない。面白くないので付き合わなければならない。夜兎の若造に付き合う我が身を思えば大変不本意ながらも神威に作法を躾けて正解であった。

「・・・っ」
高杉が短く息を洩らせば神威が高杉を気遣いながらも高杉の中に己のものをどっぷりと吐き出した。
毎度云っていることだが、神威は外に出すことを嫌がる。最中に何度も殴ってみたり足で蹴ったりしてみたがこれだけは神威が頑として譲らなかったので仕方ない。そもそも高杉は男であって神威が挿入している場所は出す場所であって入れるところでは無い。其処に出されるこちらの身にもなってみろと云ってみたが、神威はそれでも譲らなかったので、もう諦めている。
高杉の上に乗っている神威をどうにか見遣れば神威も相当我慢したのか、はあと荒い息を洩らしていて、それがどうにも堪らなくていけなかった。若い身体というのは高杉にとってあまり経験の無いことだ。常ならば自分と同じくらいか女でも男でも年上ばかりである。だからこそ神威の発展途上のよく締まった肉体というのは時折魅力的に見えた。
何気なく高杉と居る時でも、神威の意識が高杉に向いていない時に、高杉はその身体を見て情欲を覚える。神威が高杉に欲情するように、恐らく同じ種類の。滅多にそういったことは無かったが確かにそういうことも稀にあった。
引き締まった筋肉に、これから育つであろう身体、肉体の最盛期はまだ先だ。そういう美しい身体を神威は持っている。
けれども夜兎の餓鬼相手に本気で挑まれても困る。己が死んで仕舞うのではないかと最中にそう思ったこともしばしばだ。
例えば神威のペースで突かれると高杉の疲労が通常の比ではなくなるので、仕方無いので我慢を覚えさせた。その我慢の果てに達した際の神威の顔を見るとなんとも云えない心地になる。
それがどういう類の感情なのか高杉には薄々わかっていたが、そこで考えるのをやめた。
けれども己を求めて求めた果てに達する神威を見ているとどうしようも無く胸が締め付けられそうになることがある。
そんなことをつらつら考えながらも高杉は息をついた。
久しぶりの逢瀬で神威の方が盛り上がっていたのか今夜のは激しい。
神威に粘り強く乞われ、丁度春雨本部の帰りだったのもあって、神威の艦まで付き合って仕舞ったのは高杉だ。

( それを後悔しても遅ぇ・・・ )
もう指ひとつ動かすのも怠い。
乱れた衣服を直すのすら億劫だ。
散々神威に揺らされ、悲鳴をあげそうになるのを堪えながら、震える脚でどうにか踏ん張って神威を受け入れればこれだ。
( 最悪だ・・・ )
最悪の気分である。
当の神威はしれっとした顔で、水を飲んでいる。
このまま目を閉じて忘れて仕舞いたかったが目の前にいる夜兎の餓鬼を思うと油断も出来ない。
出来ないのでどうにか目を開けているのだが、それも今の高杉には辛かった。
そんな高杉の上に神威は平然と乗ってくる。
再び脚に指を這わせてくる神威に流石の高杉もぎょ、とした。
「・・・おい・・・まだ・・・」
「いーじゃん、やろーよ、俺全然元気だし」
高杉の脚を持ち上げ、股倉に身体を割ってくる神威が憎らしい。
抵抗する気力も無いので、高杉は半ば諦め気味に毒づいた。
「化物が・・・」
「化物結構、俺達夜兎には褒め言葉だ」
にこりと笑う餓鬼が腹立たしい。
腹立たしいが腕を動かすのも辛い。有無を言わせず再び己を揺らしだした餓鬼に揺らされるしか無い。
けれども神威からすればそんな高杉がまずい。
そもそも神威の手で果てさせて、何度か高杉の中で神威も果てて、引き抜けば高杉が辛そうに眼を伏せている。
衣服を乱して、神威の普段眠っている敷布の上で高杉がしどけなく伏している様が堪らない。
高杉はわかっていないのだ。
それがどれほど色香があって、どれほど神威を刺激するのか。
常より酷くしたのも、激しくしたのも神威にはわかっている。
自制はかけているものの、久しぶりで我慢が効かない。高杉に対して優しくしたいが、己の欲望の方が先走る。
高杉の身体を蹂躙して、そして高杉がぐったりと己の敷布の上で倒れている様は酷く神威を満足させた。
この男の全てを征服した感じがしていい。
なのにその眼だ。
高杉の眼を見た時、神威はその全てが錯覚だと知る。
( いつもそうだ )
高杉の眼、あの片方しか無い眼。
あの眼がどれほど己が高杉を蹂躙しても征服できていないのだと思い知らしめる。
この神威が欲してやまないのに、高杉の眼はいつまでも征服できない。
弱い種の癖に、神威の思い通りにはならぬ強い男。
酷く挑発的な目線をしていると高杉は気付いているのだろうか?
( 気付いてるのか、無意識なのか・・・ )
この男の眼は神威の中の獣を刺激する。
だから、我慢できない。
高杉を前にすると神威は我慢しながらも我慢できない欲望がせめぎ合っていて、苦しい。
力のままに犯してもこの男は己のものになってはくれず、溶かすようにあやしてもこの男は侵せず。
( いつまでもアンタは手に入らない・・・ )

「ねぇ、化け物と寝るってどんな感じ?」
悪戯に神威が問えば、今度こそ高杉は舌打ちして、それから神威の頬を渾身の力で引っ掻いた。
その指先には神威の血がついている。
頬に流れる血を気にもせず神威は高杉の指に着いた己の血を丁寧に舐め、化け物らしく高杉を揺らし、追い詰める。
「・・・っく、あ、」
痛みと強さに呻く高杉の首筋を殊更優しく甘噛みしながら神威は高杉に問うた。
「どんな、感じ?」
その神威の問いに高杉は悲鳴と共に口を開く。
「犬とヤってる気分だ」
「せめて狼とか、もうちょっと格好良いのでいこうよ」
「うるせぇ、てめぇなんか犬っころで充分だ莫迦」

自棄になって答える高杉に、神威は笑う。
あんまりにも神威が自然に笑うから今度こそ、高杉は残った渾身の力で神威の髪を引っ張った。
痛い、と叫ぶが知った事か。
己の下肢の方がよっぽど酷いことになっている。
( ああ、チクショウ・・・ )
どうせ神威の艦なのだ。
良い酒があると明け透けな神威の狙いにわかっていて付き合ったのは己である。

「てめぇなんざ、ただの犬でクソガキだ」
「わんって鳴いたら満足?」
「もう黙れよ」
その子供に口付けながら、わん、などと啼いて見せるクソ餓鬼のクソみたいな手管に揺らされながら想う。
そう、相手は人間では無い。
これは獣だ。
誰にも馴れぬ、星を滅ぼす獣の種を持つ子供。
これは人では無い。
人の形をした獣だ。
獣の癖に、愛しげに己の首筋に口付けをおとす莫迦な子供。
簡単に殺せる癖に、殺さない、熱と情欲を秘めた獣。
絡められた指に、繋がる熱い舌先に、下肢にもたらされる甘い痛みに思い知る。


07:俺は獣と寝ているのだ。

お題「たわむれの果て」

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