※現代パラレル。学生。 人数合わせにと呼ばれたので付き合いもあったし仕方なく少し遅れて高杉は指定された店へ赴いた。 今日はバイトは元々休みであったし、ゆっくり家で本でも読もうかとも思っていたが、高杉が参加しなければ来ないと条件を提示されているとかで、内容に然程興味も無かったが参加費を先輩が持つというので先輩の顔を立てる為に高杉はその合コンに赴いたのだ。 ちなみに高杉を名指しで指名している女子は俺が狙っているから手を出してくれるなよ、と参加する前に高杉はきっちり釘を刺されている。だから参加することに高杉にはメリットはあまりない。あるとするなら夕飯を考えなくていいことくらいだ。 たかが合コン。銀時などはこういうのが好きそうだったがよく羽目を外して目当ての女子からは敬遠されがちだ。桂に至っては論外であり、専らそういうことに高杉を誘うのは坂本絡みの付き合いだった。 今日の相手は別の大学のグループなのだそうだ。高杉達のメンツは女子が二人ほど参加している。地下にあるという店に入れば、高杉は早速相手の大学のグループの女子の間に挟まれた。 「また高杉ばっか、本当、お前モテるよなー」 「いいの、高杉クンが来るっていうから来たんだから!」 好き勝手叫ぶ周りは既に出来上がっている。 どれだけ飲んでいるのか次々と上がる注文の声に高杉は内心うんざりしながらもビールを頼んだ。 そしてふと端に座る鮮やかな髪の色の男と目が合う。 「あいつは?」 隣に座った高杉目当てだと公言して憚らない女子に問えば「神威くん」と言葉を返された。 「凄ぇな」 何が凄いってその神威なる人物だ。西洋人形のように白い肌に酷く整った顔をしていて一瞬性別を疑うほどに綺麗な男だ。ただ、一目でわかるほど、大食いだった。 「顔はイイんだけど、性格もちょっとあれだし、モテないのよねー、お金はあるんだけど、なんていうか興味が無い相手には見向きもしないっていうか、気紛れっていうか・・・彼、高杉クンみたいに色気があればまだ見れたものだけど、」 高杉と同じく神威は人数合わせで呼ばれたらしい。大方他に適当な相手が捕まらなかったのだろう。 食べ放題飲み放題でなければ高杉でも遠慮したいほどの大食漢だ。 「へぇ」 気付けばその神威が真っ直ぐに高杉に視線を寄越している。 そして不意に食事の手を休めて高杉の前に神威は立った。 「ねぇ、あんた誰?」 「高杉」 「下の名前は?」 「晋助」 「高杉晋助・・・俺は神威って云うんだ」 ちょっと退いて、と神威は高杉の隣に座っている女子をあっさりと退けて仕舞う。 「ちょっと、神威くん!」 女子の抗議に神威は張り付けたような笑みを浮かべ、「ちょっと退いてって俺は云ってるんだ」と手にした財布を丸ごと女子に渡して仕舞った。 「奢ってあげるから退いてよ」 その物言いに高杉は僅かに驚く。それで退く相手も相手であったが成程、神威は金の使い方を傲慢ではあるが心得ているらしかった。 「随分気前がいいな、財布ごと渡しちまうなんて」 「ああ、あれ?別にたいしたことじゃないよ、女の子ってさ、そういうものじゃない?」 それはお前の女の持論がおかしいと、突っ込みかけたがそれも莫迦らしくて高杉は手元に置いた煙草を咥えた。 火を点けようとする前に目の前に火が差し出される。神威だ。 遠慮なくその火を貰い、高杉は灰皿を手近に引き寄せた。 「それで?金持ちのボンボンが何の用だ?」 「ボンボン?そうじゃないよ、お金は自分で稼いでるしね」 「へぇ」 それがまた高杉の興味を誘った。 どう考えてもまともな金では無さそうであったが、神威という男に興味は惹かれる。 「俺さ、あんたが気に入ったみたい」 こういうの、稀なんだけど、と神威が言葉を付け足した。 「ね、今から飲み直さない?」 奢るよ、と神威は立ち上がった。 「財布、ねぇだろ」 「ああ、電話したら持ってくるよ」 「誰が?」 阿伏兎、と神威が一言云って立ち上がり、高杉を引き摺るように歩きはじめる。 「え?ちょ!もう帰るの?」 「悪ぃな、また」 高杉が慌てて面子に言葉を足せば「えー!」という聲があがる。 内心では付き合いで来たこの場から解放されて良かったが、神威は周りのブーイングなど気にも留めない様子でさっさと店を出て仕舞った。 店を出て直ぐに神威は電話をかける。 ワンコールで直ぐに出たらしい相手に神威が場所を云う。外で煙草を吸っていると、程無くして車が到着した。 「金持ちでなきゃ明らかにヤクザだろ、これは」 思わず高杉が呟けば、神威は聲を立てて笑った。 笑えば歳より若く見える。思ったより愛嬌のある顔に毒気を抜かれてしまう。 「まあ、当たらずとも遠からずってとこかな、大学って退屈かと思ってたし合コンなんてご飯食べられるところくらいにしか思ってなかったけど、思わぬ拾いものをした気分だよ」 乗ってと車に促され高杉はその後に続いた。 「それで、何処行くんだ?」 「何処でも、高杉の行きたい場所に」 悪くない。 神威という男に付き合うのも悪い気はしなくて、高杉は酷く気分が高揚するのを感じた。 「それじゃ、とりあえず聞かせろよ」 「何を?」 「お前の事」 大飯食らいで敬遠される神威とモテすぎるからと男子に敬遠される高杉、それが二人の出会いであった。 そしてそのまま神威のマンションへ赴き、一夜を過ごしその後まさか付き合うことになるなどとは思ってもみないことだ。 呑んでいたとはいえまさか男と寝るなどと高杉の人生設計には無かった。けれども翌朝酷く機嫌が良さそうに朝食を手にベッドに乗り上げてくる神威を見ればそれもまあ、有りかと思えて仕舞うから随分性質が悪いのに捕まったとも思う。 「ちなみに親父は世界を股にかける賞金稼ぎで、俺もそんな感じ、こいつらは第七師団って云って俺の部下、賞金稼ぎと情報収集してるのさぁ」 「ファンタジーだ・・・」 その相手が、海外で有名な賞金稼ぎ一家だと知ったのはその直ぐ後のことだ。 11:合コンにて。 |
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