※連作の方の設定に乗っているので神威が童貞だった設定です。


セックスが綺麗なものとは高杉は思っていない。
セックスをして何かが変わるなんてことが無いのも知っている。
そういうことを思うのはセックスを知らない餓鬼の幻想である。
そしてその餓鬼の幻想が砕かれてもその餓鬼が己を欲する様に高杉は眩暈を覚えた。
「よくもまあ、毎夜毎夜来やがる」
「駄目?」
はっ、と息を漏らす餓鬼はこの春雨第七師団の団長であり、現在は提督の地位にある男だ。
その神威に押し切られるままに関係を持ったが、一度すれば満足すると思っていたのに神威にしてみればそうでは無かったらしい。
懲りずに通ってくる子供にいい加減高杉はうんざりした。
神威は確かに辛抱強く高杉に触れる。
慎重に高杉を傷付けまいとする様がいじらしくてつい許して仕舞った。
己もこの餓鬼に随分絆されたものだと高杉は溜息を吐きながらも更に深く繋がろうと足を抱え始めた神威の頭を殴った。
「痛い」
「いい加減にしろ、クソ餓鬼」
「何で?もう駄目?」
高杉の身体が大丈夫かと己の手管よりそちらを心配するあたりが夜兎らしいとも云えたが、いい加減限度というものが高杉にもある。
「てめぇみてぇな天人に付き合えるほど俺ぁ丈夫じゃねぇよ」
煙管を手にし高杉は火を点けた。
そしてそれを燻らせながら、神威の髪を引っ張る。
「痛いってば」
「痛ぇならいい加減覚えやがれ、何度もされると辛ぇんだよ」
そう、これはセックスをしてからわかったことだが、神威が未経験だということを差し引いても、夜兎の特性なのか、神威は短い間隔で何度も達する。しかも体力が底無しなのだ。それに付き合わされる己の身にもなってみろというのだ。
最初は好きにさせた。これきりだと思っていたし、力で来られれば高杉には殺し合いをしない限り勝ち目など無い。
どういうわけか神威は高杉に欲情している。その様に呆れながらも最終的に一度でも交わることを受け入れたのは高杉だ。
( 早計すぎたか・・・ )
神威の真っ直ぐさを高杉は嫌いでは無い。
嫌いでは無いから、この関係もやぶさかでは無かったが、神威のペースでされると高杉がもたない。
どうせこの餓鬼はまだ高杉に飽きる気配は無いのだ。
ならばそろそろ覚えさせなければならない。
「俺とやりてぇならちゃんと手順を踏め」
そう云われて神威はきょとん、とその綺麗な眼を高杉に向けた。
高杉はその髪に指を入れ、煙管を吹かす。
「覚えればいいの?」
「できればな」
高杉が神威に教えたのは我慢だ。
何度も達しそうになる神威に「待て」を覚えさせる。
そうしなければ高杉自身が疲弊して仕舞う。一晩に何の手管も無い力で押すようなセックスを何度もされれば気分も悪くなるというものだ。

神威に揺らされながら高杉は息を詰めた。
「まだ、駄目?」
苦しそうに神威が問う。
高杉は駄目だと上擦りそうな聲を押さえながら神威に云った。
「イキたい、」
そうすると神威はより一層苦しそうに唇を噛み締めながら高杉の中を穿つ。
( これは失敗か・・・ )
やべぇ、と珍しく高杉は焦った。
常よりセックスに於いて到達はあるものの、絶頂を極めるというようなことは高杉には無い。
けれどもこれはまずい。
不意打ちの様に漏れる神威の苦しそうな吐息が耳を擽っていけない。
神威が高杉にしきりに「駄目か?」と問うのもまたいけなかった。
( やべぇ・・・ )
色気など微塵もなかった餓鬼の癖に我慢をさせた途端これだ。
いじらしいやら可愛いやら、神威が醸し出すその艶気に高杉はくらりとした。高杉は珍しく覚えの無い感情に揺れる。
ともすれば嬌声のような類のものが漏れそうになる。それをぐ、と高杉は堪えながら、「もういい」と云った。

「・・・っ」
その言葉と同時に達する神威を見つめながら、高杉は息を吐く。
これは危なかった。
持って行かれるところだった。
この餓鬼の前でそんな無様を晒すなど高杉には出来る筈も無い。
好かったとは云いたくは無いが確かに好かった。
まずい。流されそうになる。
再び高杉を揺らそうとする神威を制して、高杉は「休憩だ」と云った。
ずるりと中から神威が出ていく振動でさえ、のたうちそうになる身体を抑えるので精一杯だ。
「これでいい?」
「もう少しゆっくりやれ」
小刻みに揺らされてあんな風に耐えられたら煽られて仕舞う。
そんなことを云えばこの餓鬼が調子に乗るだろうから決して口にはしないが、前後不覚になってこの餓鬼を求めて仕舞いそうになるような誘惑が其処にはあった。
全く性質の悪いことだ。
性質の悪い餓鬼に犯されて、その己の無様に、そして揺れる内心に、高杉は苦味を覚えた。
手管はクソみたいに下手な癖して我慢させた途端この色気である。視覚的に煽られてるその感覚に高杉は己はこの子供の顔や身体を思ったより好いているらしいと自覚して更に嫌な気分になった。


07:上昇するのに
下降線

お題「捕食」

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