※やや下品です。 神威がその日部屋に訪れた時に高杉は追い返せば良かったのだ。 嫌な予感がしていた。 予感はあったが、結局高杉は神威を追い返せずに褥に至る。 「それで、何で今日はそんなに気色悪ぃんだ?」 聴きたくない。聴きたくないが、高杉は口にせずにはいられない。 そしてできることなら是非遠慮したかった。 これは高杉の勘であったが常ならぬ神威の機嫌の良さからこの餓鬼は碌でも無いことを云い出すに違いなかった。 「うん、高杉、今日はいつもとちょっと違う事していいかな?」 「断る」 「ちょっとだけだから」 「だが断る」 「本当先っぽだけ!」 「そう云って最初も突っ込んだだろうが、手前はよぉ、一遍死ぬか?クソ餓鬼」 「うん、どう云っても嫌がると思うから云うけど、舐めさせて」 「死ね」 その後は散々であった。 高杉がどう抗おうとも結局神威は実行する。 死ぬほど気が乗らなかったが神威に力で圧し掛かられれば高杉にはどうにも出来ないのだ。 終わったら殺す、そう思いながらも結局高杉は神威の行為を受け入れた。 受け入れたが気分は死ぬほど下降している。 出来れば金輪際神威とは寝たくないほどだ。 この餓鬼を気に入ってはいるが、妙なプレイがしたいわけでは無い。 神威は元々知識が薄い。 性に対しても野性的すぎた。手順程度は知っていたようだったが手管というものが全く無い。 そういう意味では高杉も神威も性的には淡泊でありノーマルなのだ。 夜兎の特性なのか神威は一度の行為で短いが沢山達する。それをどうにか高杉のペースに合わさせて漸くまともな手管が身に付いた矢先だった。 「満足かよ」 散々高杉のものを舐めて挙句飲み干す餓鬼に高杉が問えば、今度は舐めて欲しいときたものだ。 もう半ばやけくそになって高杉は神威のそれを咥えてやる。 莫迦らしくて噛んでやろうかとも思ったが後が面倒なので、さっさと終わらせることにした。 どうせ餓鬼だ。直ぐにイクに決まってる。 そして案の定数分もしない内に神威がイキかけた時にそれは起こった。 「顔にかけさせて」 「は?」 あまりのことに一歩遅れた。遅れた頃には遅い。 あ、と思った時には神威のそれが高杉の顔にかかった。 「・・・・・・」 刀を抜きかけたがふと、高杉は気付く。 この莫迦がそんなことを考え付く筈が無い。 ならば原因がある筈なのだ。 「おい、それ何処で覚えた?」 問えば案の定神威はビデオを観たのだと云う。 ビデオ、ビデオだ。恐らく碌でも無い種類の。 「ん?阿伏兎の部屋で見付けたビデオにあったんだけど」 高杉は顔にこびりついた神威のものを拭きながら、云った。 側近の者が居たのなら肝を冷やすような聲で云ったのだ。 「ほう、阿伏兎を今すぐ俺の前に連れて来い」 * 呼び出された瞬間、阿伏兎は嫌な予感がしていた。 時刻で云うと真夜中だ。夜中の三時過ぎに団長である神威からの緊急の呼び出し。しかも呼び出し先は近頃団長が入れ込んでいる高杉の部屋だ。こりゃあついに高杉の腕くらいはもいだかと思ったが、どうも違うらしい。 部屋で五体無事な様子ではあるが凍てつくような表情の高杉を見た瞬間、阿伏兎は謝った。 「すみませんでした・・・」 何が悪いのかはわからない。心当たりなどまるで無い。 けれども此処でこの美人をこれ以上怒らせてはいけない。それだけは阿伏兎にも理解できた。 そもそも高杉と神威との仲を阿伏兎はあまり歓迎していない。さっさと別れてくれれば万々歳だ。 けれども神威の様子を見ればまだぞっこんと云った風であるし、これはいよいよこの美貌の男にいかれちまったかとげんなりした。 いっそのこと神威には悪いが高杉にうちの団長と別れてくれと直談判してやりたい。 そうすれば阿伏兎は神威が高杉に引っ張られるんじゃないかというような面倒なことを考えなくて済むし、あちらの河上万斉という高杉の腹心の男だってこの関係にはイイ顔をしていないのはわかりきったことだ。 この二人の関係は誰も歓迎していない。純粋に破壊活動に勤しむのなら大歓迎であったが、肉体関係に及ばれては百害あって一利も無い関係だ。いい加減神威や高杉の部屋の前で二人の房事が終わるのを待つのにもうんざりしているのもある。 今日は久しぶりにそれから解放されてゆっくりしていた矢先に神威に叩き起こされたのだ。 そして明らかに怒り心頭の様子の高杉に阿伏兎はじっとりとした汗が噴き出るのを感じた。 え?なに?俺殺されるの?とさえ思ったほどだ。団長の援護は期待できない。 にやにや笑いながらこちらを見る神威を心底殴ってやりたい。 阿伏兎は今孤立無援である。 そして高杉が一枚のディスクを阿伏兎に向かって投げた。 「これ・・・!」 そう、秘蔵のエロDVDである。 長らく遠征が続けば自分で処理することもある。その為の大事なものだ。 ちなみに断じて云うが中身はごく一般的なAVであって、妙な性癖が入ったものでは無い筈だ。 けれども、神威がそれを観たと考えると自然に結果がどうなったのか阿伏兎には理解できた。 サァ、と顔面が青褪める。 「そういうのは餓鬼の目のつくとこに置いとくんじゃねぇよ、手前のとこの情操教育どうなってんだよクズ」 油断していた。そうだ。神威は覚えたての猿、ではない、覚えたての餓鬼だった。 そしてそれに付き合ってやっているのは高杉なのだ。 勿論力で迫れば阿伏兎にだって高杉を犯せる。けれどもこの二人の微妙なところは神威から迫った脅迫めいた関係であるにも関わらず高杉がそれを許容している点なのだ。 高杉は神威を好いてはいるのだろう。身体を拒まず辛抱強く相手をするあたり神威の粘り勝ちとも云えたが、それでも僅かでも情が無ければ付き合いはしない。夜兎という破壊を主とする種族の餓鬼と寝ようと云うのだ。まして神威は男である。 最初は神威が高杉を肉体的に受け入れているのだとさえ阿伏兎は思っていたくらいだ。 けれども実際は逆だった。 一度火急の用があって部屋に入ったことがある。その際にそれを知った時は卒倒するかと思ったほどだ。 よくもまあ人間ごときの脆弱な肉体で神威を受け入れるものだと阿伏兎は感心すらした程だ。 そしてその神威があのDVDを観た。そしておそらくそれを実行した。 高杉の怒りは最もであろう。 阿伏兎は絞り出すような聲で再度謝罪の言葉を口にした。 「本当に申し訳ございませんでした・・・」 やばい、殺される。 あのマセ餓鬼がAVなんぞ見やがって、畜生。 ろくでもねぇぞ畜生。今日は厄日だ。 厄日に違いない。 「全くこういうの観て解消するなんてさ、それこそ無駄撃ちなんじゃないの?阿伏兎」 「てめぇに云われたかねぇよ!莫迦団長!くそったれぇ!」 男とどうこうなっている神威に絶対に云われたくない台詞である。 ちなみに阿伏兎の名誉の為に云っておくが、これはあくまで長期遠征の時の為のものである。絶対に普段からそうではない。念の為。 高杉は壮絶な怒りとくらりとするような色気を纏いながら阿伏兎に紙の束を投げた。 「・・・これは・・・」 捲っても捲っても鬼兵隊名義の請求書である。 合算するといくらになるのか眩暈がする。 けれども残酷な女王様のように高杉は云った。 煙管から煙を吐き出しながら最後通告をした。 「これ、払ってくれるよなァ?」 「・・・はい・・・」 後日、鬼兵隊に新しい設備と小型戦艦が届いた。 05:AVの話。 |
お題「アダルト」 |
menu / |