※魔王ルートED後。


ここのところもうずっとそうだ。
どのくらいそうか、と云うとこの六本木ヒルズに
入ってから、かれこれ一ヵ月ずっとだった。
何がずっとかと云うと今行われてるこのエロいことだ。
直刀は先程から中々達することが出来ないでいる。
背後の直哉は直刀の身体を弄るだけ弄って
快楽にぶるぶると慄える様子を眺めては楽しんでいるようだった。
( いー加減にせぇ、っちゅーねん! )
抗議をしようにもこのだらしのない口から洩れるのは
聴きたくもない己の喘ぎ聲と(どうせなら胸バインのおねえちゃんがいい)
更に情けないことに口端から溢れる唾液だけだった。
これでもまあまだマシな方なのだが、
直哉に云わせるとこの半年と少し、つまり今年に入ってから
改造COMP作るのに忙しくて直刀に触れられなかった
反動らしいのだが、直刀にしてみれば大迷惑である。
魔王に成ってから少なくとも一週間以上は部屋から出してもらえなかった。
そうこうしているうちに(直刀が失神して寝ている間にこの良く出来た
エロエロ兄貴は確り働いていたらしい)
直哉があれよあれよと直刀を魔王へと祭り上げる体制を整えて仕舞い、
政府との交渉云々や神様との戦争云々も全部直哉がやって仕舞っている。
つまり直刀はお飾り魔王なのだと思うのだが、それを云えば直哉は
心外だと云わんばかりに「それは違うぞ、直刀」と切々と
直刀の必要性を語るのだ。そして話の最後らへんになってくると
直刀も直刀で考えるのが面倒になって「はあ、そうなんや、すんません」と
丸めこまれ、かつ最終的には何故か直刀が謝っている始末である。
そしてその最初の一週間の後、溜まっていた直哉の有り余る性欲
( ほんまこれなんとかならへんかな )
が大爆発してそれが少し治まって漸く部屋の外には出られる頃になって、
久し振りに篤郎達と顔を合わせた頃には直刀は名実共に天下の魔王として
君臨していたというわけだった。

そして今魔王と魔王兄は何をしているかというと
やっぱりいつもと変わらず淫行に耽っているわけで、
しかも今日はお風呂場で、だ。
部屋の添え付けのバスルームはごく普通のものだ。
六本木ヒルズの居住区内の手頃な一室を自分達の部屋にしたので
それなりに広さはあったがあくまで人間的なスケールである。
何せ悪魔達は直哉に直刀を甘やかすようにでも云われているのか
それこそ悪魔スケールのものを作りたがる。
其処には彼等なりの好意や尊敬の念が込められているだけに
無下にも出来ない。
有難く受け取りたいが、一度城内全ての水を全部コーラに変えられた時は
流石に元に戻してくれとお願いした。何せ顔が洗えない。
だから直刀の為にと幹部クラスが使える大きな浴場も用意されていたが
だいたい直哉がこの直刀との部屋に仕事を持ち込んでいることが
圧倒的に多いので結局添え付けのバスルームで身体を洗うことの方が
多かった。
「・・・っ」
浴槽の中で直哉に抱き込まれながら悪戯に下肢を嬲られる。
達しようとすると途端に直哉の手が離れ、
もういい、と自分で触れようとするとその手を戒められる。
「あっ、、、いややって・・・っ」
ぞくぞくと背筋に快感が走り、は、は、と小刻みに熱い息が吐き出される。
直刀が熱めの湯を好むのを知っている直哉が用意したのだ。
それなりに温度のある湯である。息が上がるのは早かった。
背後から直刀の肩口に直哉の唇が寄せられる。
まるで恋人同士がするようなその仕草にどきりとした。
( 直哉、俺のこと好きやってゆった )
この綺麗で不可解な従兄がそんなことを云うなんて思わなかった。
自分は馬鹿だから直哉に云われないとわからない。
だからあの時、直哉の手を取った後直哉に聞いた。
あの時の直哉の照れくさそうな、気恥しそうな姿が
多分一番本当の直哉なのだ。
それを知って仕舞ってから直刀はどうにもこの兄が、
この霧原直哉という男がどういうわけか可愛いと思えて仕舞う。
( ああ、もう・・・どないしよ、 )
だからこんなことをされても怒るに怒れない。
そして多分、これは直刀の勘だが、
直哉はそれをわかっていて直刀に求めてくるのだ。
( そんなん、されたらどうしようもないやん )
ぬるんとした舌が耳尻を刺激する、
お湯の中だからわからないが、にゅる、とした感覚が
直刀の××(ごめん云われへん、堪忍な、やっぱり恥ずかしいねん)
を刺激して直哉の長い指が思うままに中を蹂躙する。
「あっ、、、アッ、、、」
一層高い悲鳴をあげ、次こそイかして貰えると
思ったところで、不意に直哉の身体が離れた。

「へ?」
「出るぞ、直刀」
いつもの直哉だ。
突然現実に引き戻された感じで、あれ?なんかおかしいんとちゃう?
とツッコむことも忘れて、「来い、直刀」と云われる言葉のままに
いつものようにタオルを渡されて服を着る。
中途半端な直刀の緩く立ち上がった自身は無視だ。
直哉はさっさとパソコンの画面に向かって仕舞い、
ベッドに座りながら直刀がドライヤーで髪を乾かした頃には
すっかり仕事をしている時の直哉だ。
( なんや、それ・・・! )
中途半端プレイという新手のプレイだろうか?
首を傾げるが、それとも直哉の気が逸れたのだろうか?
それはそれで有難いが反面、煽られまくった直刀としては
不完全燃焼だ。
17歳のぴちぴち高校生( あ、今魔王やった )としては
なんとも云えないものがある。
何せ風呂場で散々睦みあった挙句一度も達していないのだから
悶々とするのは仕方ないとわかってほしい。
かと云って、自分でするのは躊躇われた。
散々直哉にヤられてる所為もあって随分御無沙汰であったし
(思えば最初に直哉にヤられてから全然自分ではしていなかった)
この部屋は直哉と共同であってベッドも同じだ。
故に致そうと思えば此処で直哉の居るこの部屋でヤるか、
何処かでこそこそヤるしかない。
そんな魔王悲しすぎる。元々無い威厳みたいなものが
地球を突き抜けて無くなってしまうのではなかろうか、
情けなさすぎてもう泣ける。
助けを求めるように直哉を見るが直哉は背中を向けて
仕事に集中したままで、直刀には目も向けない。
腹が立つ、この悶々としたものをやり過ごしたい。
けれどもこの渦巻くものを散らしたい。
直刀、一瞬悩んで、そして結局直哉の隣に立った。

「あんな、直哉・・・」
もじ、と直刀が一瞬膝を擦り合わせる。
小動物が構ってとでもいうような仕草だ。
ぴくり、と直哉の手が止まった。
「俺・・・」
そもそも直刀は滅多に誘わない。
お願いなど云わせなければ云わなかった。
無論それはセックスに限らず例えば洋服ひとつ買うにしてもそうだった。
直刀がそうなるのは直哉が直刀が欲しがる前に与えて仕舞う悪い癖の所為なのだが
偶には可愛くおねだりされたいというのが心理である。
そしてこの(エロ)馬鹿兄はそれを云わせたいが為に
先程からずっとその言葉を待っていたのだ。
直刀が悶々と身体の熱を持て余しているのはわかっている。
そうなるように散々弄ったのだ。
だが逆に直哉も耐えたのだ。非常に馬鹿馬鹿しいことではあるが
その一言が聴きたくて耐えたのである。
「俺、直哉とシたい」
瞬間、直哉は直刀の腕を掴みベッドへと放り投げた。
「は?」と目を白黒させる直刀に構う余裕もなく
直哉は直刀に口付ける。
口付けながら折角着られた衣服をたくしあげ、
まだ少し硬さの残っている直刀自身に触れる。
激しい口付けの雨にどうしていいのかわからないまま
直刀の身体は再び火が点いて追い上げられていく。
「っ、、あ、あ、っ、直哉、そんないきなり・・・」
「直刀、」
はあ、と熱い息が漏れる、直哉の息が耳にかかった瞬間
直刀が果てた。
「・・・っアッ・・・・!!」
悲鳴染みた聲があがるのさえも聞こえないかのように
間髪いれず直哉の硬く起立したものが直刀の中に押し入ってくる。
痛みはない、慣らされて寧ろそれを待っていたくらい、
その激しい兄の熱に散らされるのを待っていたのだ。
漸く求めていた刺激が与えられてみっともない喘ぎ声を
あげて、互いの舌を絡めながら、直刀は直哉の手をきつくきつく
掴んだ。
( 直哉は、 )
「アッ、、、ああ、、、もっとッ!」
( 離したらあかん )
多分離したらこの兄は駄目なのだ。
この寂しい甘えたがりの兄は消えてしまう。
だから、
「なおやっ」
必死に掴みながら直哉を受け止める。
直哉も余程余裕が無かったのかいつもよりずっと早く達した。
びゅくびゅくと放たれる熱を受けながら
直刀は苦笑した。
( あかん、俺、流されてる・・・ )
いつもそうだ、いつも直哉のペース、
( ああ、ほら、また )
あの好きだと云ったそんな純粋な眼で直刀を見つめるものだから、
直刀は笑ってしまった。
( しゃーないなぁ )
「直刀、」
「まだするんやろ、ええよ」
降る口付けを受けながらこの兄を抱きしめる。
抱きしめれば直哉の香りがした。
それはじん、と直刀の胸の奥へ染み込んでくる。
時々直哉を懐かしいと思うように、
今度こそこの手を離すまいと思うように。
直刀は直哉を抱きしめながら目を閉じた。

やってることはほんまどうしようもないけど、
好きやったらしゃーないやん、
でもこのエロエロさはなんとかして欲しいんやけどな、
エッチなこと言って欲しいなら直哉はこんなことせんと
最初から云えばいいのに、そこはそれ、
大人の駆け引きってこと、でええんかな?
俺、そのうち直哉を翻弄するくらいになってみるから
楽しみにしててな。
でもほんま、



ウチの兄ちゃん
イケズやねん。
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