※魔王ルートED後。


直刀が魔王に成ってから三ヶ月が過ぎ、
三ヶ月が過ぎても実際のところ直刀は魔王らしいことは
何もしていない。
何せ全部直哉が片付けるからだ。
まあ元々弟体質である直刀は面倒なことは直哉がやってくれるなら
別にいいかな、という程度の認識であって
魔王になってもちっとも偉そうではなかった。
小市民である。
だから生活も至って小市民なものであって
贅沢と云ってもささやかなものであったし、
篤郎やジャア君とゲームをしたり
外で散歩して「お疲れ様です陛下」なんて高位の悪魔に
云われては「はあ、お疲れ様です」と頭を下げる日々であった。
やっぱりとっても小市民<略
しかし矢張り魔王は直刀であったしその力は無意識下で
絶対のものであり、それだけは揺るがない。
バ・ベルの力らしいそれは直刀が意識せずとも働き、
この魔王の領土を堅固に護った。
時々直哉に言われたことを胸の内で思うだけで
それらは実行されるので正直直刀に魔王としての
実感が湧かないのも無理はない。

というわけで直刀イマイチ魔王になった自覚もないまま
最頂点に君臨して仕舞い、世にも珍しいお笑い好きの魔王として
日々お笑いDVDを見たり、篤郎達といつものように遊んだり
呑気に欠伸をしたり、あとは直哉にHなことをされたりされまくったり
して過ごしている。まあほとんどは直哉とのHであったのは此処に
明記しておく。( 直哉しつこいねん )
しかし最近になってひとつ増えた。
事の発端はマグチさんが(あのロキという悪魔だ、以前明らかに偽名だろうが
直刀にそう名乗ったので直刀はそのままマグチさんと呼んでいる)
酒瓶を持ってきたことに始まる。

「いや、いいのが入ったから飲もうと思ってね」

どう?と差し出されたそれに思わず隣の直哉を見れば、
「まあいいだろう」と返された。
やったお酒飲めるんや、と軽い気持ちで口にしたら、
ものの見事に直刀出来上がって仕舞い、その時のことは全く記憶に無い。
ただ起きたら妙に身体がだるいのと、凄く楽しくて気持ち良かったという記憶だけが
都合良く残ったのでお酒を飲むのが好きになってしまった。
実際のところは直刀はぐでんぐでんに酔っぱらって仕舞い、
その酔っぱらう様があまりにも可愛いので直哉と遊び半分のロキがどんどん
飲ませて、まあ直哉は其処でちょっとHなことを致しているわけだが
ロキはそれを肴にお酒を進めていたわけで、
しかし直刀はそんな記憶がすっかり無く、
直哉達に良い様に遊ばれているとは思わず、
このところ毎晩あるこの酒盛りが楽しくて面白いものと覚えて仕舞った。
だから直哉達も調子に乗って直刀にどんどん飲ませていたわけだが
ある日ふと気付いた。

「あれ・・・」
「なんだ・・・クソ・・・」
頭がぐらん、とする。
何せ今日のは魔界の秘酒とまで言われるほどのとっておきだ。
度数も相当であのロキですら酔いが回っているらしかった。
直刀を見れば平気で杯を進めている。
「直哉たちもう飲まへんの?いらんなら貰うでー」
ごくごくとそれを酔った様子も無く飲み干す直刀に
まさか、とロキが口を開く。
「直刀クン・・・ひょっとしてお酒に強くなっちゃたんじゃ・・・」
「・・・嫌な冗談だが笑ってられないらしい、俺はもう無理だ・・・」
ぐらぐらする頭をどうにか手で支えながら直哉は傍らのベッドに
身を沈めた。
「あれー直哉もう寝るん?おいしーのに・・・」
マグチさんは飲む?と問われロキはもう勘弁と両手をあげた。
完敗である。
どうやら直哉とロキは一ヵ月かけてとてつもない酒豪を鍛えて仕舞った
らしかった。
「これほんま美味しいなぁ!」
次の日二日酔いに頭をがんがんさせて寝込む二人を
他所に直刀はご機嫌で遊びに出かけたというのは云う間でもない。


ウチの弟
酒飲みでした。

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