※世界崩壊前、直哉=24歳、直刀=17歳。


すっかり新緑の季節になりもう高校2年にもなった。
明日からはゴールデンウィークだ。
待ちに待ったこの休みに何をしようかな、と
遊ぶ計画なんかを篤郎達と立てていたが、
肝心の篤郎は部室に用があると云って行って仕舞ったので
直刀は教室で篤郎を待っている。
ぼんやり机に座って携帯を弄っていると
級友達が彼女の話で盛り上がっているのを
耳にする。放課後、人がまばらな教室だ。
下世話な話をしていても誰も咎める者はいない。
会話の内容はずばり、連休中彼女とやるかどうか、だ。
勝手に耳に入ってくるそれを直刀はぼおっと聴き流しながら
そういえば初めては去年の夏やった、と思い出した。

( でもそれ男やし・・・ )
男も何も自分の従兄弟で戸籍上は兄である。
しかも相手はあの直哉だ。
改めて思い直すと直刀、微妙に凹んできた。
( 普通やないやん・・・ )
どう考えたってやっぱり異常だ。
身体の心地良さのままに流されるように
直哉とセックスをする日々だったが、
最近では直哉の仕事が多忙を極めているのか、
それなりに「健全」とも云えるペースにはなっていると思う。
でもそれでも今年の1月くらいまでは凄かった。
思い出すのも恥ずかしいくらいヤリまくった。
( 覚えたてのガキがするみたいや・・・ )
多分何かの新記録は打ち立てれると思う。
何の記録やろ?従兄弟でお兄ちゃんな人と半年間でセックスした回数?
あかん、これやと競われへん、
全国の従兄弟でお兄ちゃんな人とセックスした高校生なんて
何人おるか、もしかしたら自分だけかもしれない。
自分だけなら自分だけでそれはまあ世界一とも云えるのでいいかもしれない。
何せオンリーワンだ。
( ってちがーう! )
そんなことで世界一取ってどうすんねん!と
自分で自分にこっそり胸の内でツッコんでいると
漸く篤郎が戻ってきた。

「ん?どうした?何かあった?」
「ううん・・・何でもないねん・・・」
訊かんといたって、と云いながら
直刀はとぼとぼ帰路についた。
家に帰れば直哉が珍しく夕飯を作っている。
最近は直哉が忙しいので店屋物ばかりだった。
「珍しい、帰っとったん?」
「朝にこっちに戻って今起きたところだ」
「ああ、それで」
納得だ。
では夕飯を食べたら直哉は青山の仕事場に戻るのだろう。
(最近はずっとこんな調子だ)
今日の夕飯は鶏肉のトマト煮とバターライス( めっちゃ美味しいねん! )
そして簡単なサラダとスープ。
それほど手は込んでいない、と直哉は云うが、
直刀からすれば魔法のようだ。
とりあえずこんな変態犯罪者のような兄貴でも、
ご飯は美味しく作ってくれるんやから有難がっておこう、と
直刀は御馳走様、と有難く直哉に手を合わせた。
食後にお茶を飲むのは霧原家の習慣だ。
のんびり緑茶を啜りながら徐に直刀は机に突伏した。

「俺童貞はいやや・・・」
今日の放課後の会話を思い出したのである。
やっぱりこう男として女の子ともまだやのに、
こんな淫行に慣れてしまうのはちょっと・・・
( しかも俺が下やねんで! )
兄に、直哉にケツの××( ごめんやっぱりまだ云われへん、こんなん
恥ずかしい )
に×××( これも云われへん・・・ )ツッコまれて
掻き回されてあはんうふんなことになってるなんて気持ちいいけど
情けなさすぎる。
とぐちぐち云っていると直哉が平然と云い放つ。
「風俗へ行け」
「まだ17やもん、風俗なんて行かれへん」
当然である。
ならば仕方ない。
「彼女を作れ」
直哉の手前そういうのはどうなのかなと少しは思っていたが
あっさりと返された言葉に、なんだ、俺ら付き合うてるわけちゃうし、
そうやんな、そうだった。
「あ、彼女はええんや、俺じゃあ彼女作る」
「ああ、作って一発と云わず何発でもやって男の矜持を回復してこい」
直哉の適当な言葉に背中を押される形で
直刀は立ち上がった。
今からならまだ誰か女の子ナンパできるかもしれへん!
ほな、行ってくるーという弟を見送り、
直哉はノートパソコンの前に戻った。
ちなみに、10時までには帰れよ、と釘は刺して。

不意に隣で気配がする。
元々頻繁に逢う方でも無い。毎日見る時もあれば何百年も
逢わないこともある。
あれから直刀の居る場所には決して現れなかった男だ。
相変わらず香水の匂いをぷんぷんさせて、派手なスーツを着ている。
直哉は隣で「いいの?彼いっちゃったよ」なんて云う、
胡散臭い盟友(不本意ながら)に視線を向けた。
「かまわん、どうせ失敗するか直ぐ別れる」
「成る程、計算のうちってこと」
性格悪いよね、と哂う男に、お前にだけは云われたくないと
毒づきながら、とりあえず今日のノルマはなんとかなりそうだ。
あの可愛い弟が帰って来るまで仮眠をして、
それから久しぶりに弟と濃密な時間を過ごそうと、
あのおねだり上手な弟の脚を開かせて己を突き立て揺さぶろうなんて、
そんな不埒なことを考えながら
直哉は手にした眼鏡の蔓を折り畳んだ。


ウチの兄ちゃん
色ボケやねん。
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