※魔王ルートED後。


よくよく考えてみると一体全体何が
どうしてこうなっているのか、と考える。
つい先ほどまでバードキスを交わしながら
腰をまさぐっていて、軽い口調で今後の戦略方針などの
話をしていたところだ。
(ちなみにその方針説明を羅刹以外を交えてする時は
お触り禁止を篤郎に云い渡された。弟子のくせに何様だ。
というものの話に集中できないと羅刹に殴られたので
以降自重はすることにした。)
そんなことより今、この時が問題だ。
各自に命令を通達させて羅刹と部屋に戻って
シケこんだらこれだ。
直哉はややあってから重たい口を開いた。
「で、何故俺が縛られている」
まあまあ、と羅刹は笑う。
こうなってくるとこの弟は止まるまい。
直哉は溜息を吐き、今現在自分のおかれた状況を確認した。
此処は羅刹と直哉の共同で使っている主寝室である。
キングサイズのベッド(展示ルームから運びこませた)
に常にベルトと鎖が常設されている大変イカガワシイベッド回りだ。
ノーマルなセックスも溺れるほど楽しいと認めよう、
羅刹と和解してからは何処でだってパラダイスである。
どうしようも無く緩んだ頭の兄ともともと頭の足りない感じの
本能で生きている弟である。今までは直哉がSっ気満載で
羅刹を従わせようとしていたが今は違う、相思相愛、
愛し愛され幸せエロエロ性活を満喫しているのである。
しかし、矢張り双方Sっ気満載であるのでこういったプレイ道具は
欠かせなかった。
( まあ、絶景ではあるがな )
何せ羅刹が今直哉の両手をベルトで固定して
身動きできないようにしてから自分で直哉のものを
挿れているのだ。
そして思うままに動く。
その淫らな様は絶景という他あるまい、
思いの他乱れる羅刹に煽られ直哉は乾いた唇を舐めた。
「はっ、、、っ、うぁ、、」
ぎしぎしとキングサイズのベッドを揺らして
存分に感じているらしい羅刹に舌打ちする。
本当なら今この場で思うままに羅刹を蹂躙し、
泣いて懇願して止めて下さいと謝るまで
嬲り倒したい。(無論懇願しても一度スイッチが入れば
気の済むまで嬲るのが直哉の主義である。)
直哉は夢中で自分の上で腰を振る羅刹を今一度睨んでから、
意気揚々と直哉を見下ろす羅刹にかろうじて自由になる
下肢を突きあげた。
「ふぅ、、、っ」
びくびくとしなやかな成長期の肢体が逸れる。
あれほど不摂生をしているのに羅刹の肌は白磁であり、
全く手入れもしていないのに何処までも奔放で美しい。
視覚的には直哉を襲って犯しているとも云えるこのセックスに
溺れているらしい弟は直哉の些細な動きも気にならないようだ。
今ならバレは済まい。
直哉はこっそり小さな妖精を召喚してベルトを外させた。
心得たように小さな妖精は簡単にベルトを解錠してみせた。
自由になった手首は少し擦れて赤くなっている。
それを確認してから、直哉を縛るベルトが外れたのも気付かない弟に
今度は直哉が逆襲した。

「よくも好き勝手使って呉れたな」
「は、え、、?」
細い腰(当たり前だこの弟の主食の殆どは煙草と水である)
をがっしり掴み、先ほどまで脳内で思い描いていた痴態を
再現すべく直哉は激しく腰を打ち付けた。
「ひっ、あ、アッ、、アアアアッ!!」
予想していなかった衝撃に羅刹が身体を仰け反らせる。
注挿を繰り返しながら舌で胸を食むと
一層羅刹が嬌声をあげた。
舌で嬲れば面白いほどにびくびくと身体がしなる。
それに中てられた感じで直哉は羅刹の身体を押し倒し、
思うままに貪った。
「アッ、ああっ、、うぁっ!」
こうなるともうとまらない。
羅刹が断続的にイキ始めた。
それを好機と直哉は激しく攻めたてた。
勝手にイク羅刹の尻を打ちながら
直哉も存分に堪えたものを吐き出させてもらう。
ぶるっ、と慄えてから低く呻き、羅刹の中に
溜まりに溜まったものを吐き出した。
それでもまだ硬度を保ったままのものを
ぐりぐりと羅刹に押し付けながら今度は羅刹の感じる場所を
集中的に攻めれば羅刹は身も世もなく喘いだ。
「あ、うあ、アアッ、、、ンッ」
くぅ、と最後の方は堪えた悲鳴になる。
皮膚の薄いところの骨が当って痛みがあるが
そんなことが気にならないほど、
羅刹は貪欲に直哉を締め付けた。

「そう締め付けるな、」
まだだろ、
耳元で囁けば羅刹が慄える、ぞくぞくと鳥肌が立っている。
身動ぎをすればどぷりと直哉の吐き出したものが溢れる。
何度も出し入れしたから泡立っていた。
耳を嬲りながら背後から羅刹を抱え込むように抱けば
羅刹がぶるぶると肩を慄わせる、
わかりやすい弟の反応に直哉は気を良くして、
右手の指先と爪を悪戯に羅刹の胸に這わせながら
左手で羅刹自身を戒めた。
かなりきつく締めたので
それだけで羅刹は呻き聲をあげる。
腰の緩やかな動きは絶えず続けたままである。
辛い筈だった。
「っく、、」
出したいのに出せない、イキたいのにイケない。
まだ少年らしささえ残る身体には辛い筈だ。
けれども直哉はよくこういった意地悪を羅刹にする。
あの苛烈な、決して意思を曲げない弟がこの快楽の
最中だけは違ったものを魅せるからだ。
プライドの高い弟はこれを嫌がる。
嫌がれば嫌がるほど直哉は云わせたくなる。
赦して欲しいと、もう直哉が欲しくてたまらないのだと、
懇願させたくなるのだ。

「さあ、おねだりしてみろ」
欲しいと強請れ、教えただろう?と云えば
羅刹は身体を慄わせて首を左右に振る。
「まだそんな元気があるか、」
じゃあ、朝までこのままだ。
今日はゆっくり愉しもう、と弟のものを戒めたまま
直哉は器用に先程己が繋がれていたベルトに羅刹の
腕を拘束した。
これでもう羅刹は直哉の思いのままである。
征服感に酔い痴れる直哉を他所に青ざめたのは
羅刹だ。こうなってはもう止められない。
朝まで嬲られるかもしれない。
その甘い恐怖が羅刹の身体に奔る。
明日は駄目だ、篤郎達と誰もいない六本木でカラオケの
予定である。動けないのだけは勘弁してほしい。
恰好悪すぎて云い訳にもしたくない、
けれども直哉がやるといったらやるし、
それこそ本当に動けない羅刹を見せて上機嫌に
「今日は無理だ」なんて云い放ちそうだ。
そんなことをやられてみろ、
もう恥ずかしくて死にたくなるに違い無い。
そして幾度か迷った末、羅刹は少し唇を戦慄かせ
(この唇を戦慄かせて羅刹の矜持が折れる瞬間が直哉の一番の
お気に入りだった。屈服させたという満足感がひとしおである)
それを口にした。
「兄さん、直哉兄さん、、、っ」
兄さんと呼ばれれば直哉はこの弟になんでもしてやりたくなる。
如何なる困難だろうと全てを覆し望みを叶えてやりたくなる。
「続きは?」
煽られて聲が擦れる、自分はちゃんとこの弟に飲まれることなく
強者の立場で物を云えているだろうか?
浅はかで欲深い己を羅刹に見透かされては、いないだろうか、
そんな心配が過るものの、羅刹はそれどころでは無いらしい、
悔しそうに唇を噛んでからそして目を閉じ
ついに観念したようにその整ったくちびるをもう一度開いた。
「頼むから、欲しい、兄さんのが欲しい、もう、」
我慢できない、赦してくれ、と擦れるように呟いた
羅刹の眼から涙が零れる。
次の瞬間直哉は羅刹を激しく責め立てた。
「あ、っあああああッ!!」
眼を見開いて羅刹が悲鳴をあげる。
まだだ、まだ離さないと羅刹を戒めたまま、
ぎゅうぎゅうと中の締め付けがきつくなって
一番搾られたところで直哉は己を吐き出し乍ら
羅刹のものから指を離した。
「、、、っぁ、、、」
悲鳴はもう聲にならない、あれほど出したというのに
勢いよく羅刹のものが溢れ、ぱたぱたとシーツを汚していく。
あまりの快感に意識を飛ばしたらしい弟は
縛られたままベッドに沈んだ。
直哉はそれを優しく支え、抜かないまま羅刹の
髪を撫でる。
「まだだ、」
そっと囁けば羅刹の身体がひくりと動いた。
「まだ欲しいだろう?」
一瞬意識を飛ばした羅刹は直哉の方を気だるげに見つめてから
そして挑戦的な視線を直哉に寄越した。
( 噫、 )
( 眩暈がする )

くらくらと湧きあがる情動は一体なんなのか、
貪欲に求めるこれは何なのか、
組敷いて自由を奪い思うままに貪っているのは直哉の筈なのに
これではまるで自分が下僕のようだ。
けれども繋いだ手は身体は到底離せるものではなく、
どうしたってこの目の前の愛しい存在に溺れていたい。
( 馬鹿馬鹿しい )
繋いだ先からじわじわと湧く歓びは緩やかに緩やかに
直哉を侵食していく、
そしていつかそれでこの身が埋め尽くされて全てを替えて仕舞う。
それが怖いと思う筈なのに何故か心地良いとすら感じる。
( 恋だの愛だの下らない、 )
しかしその下らないものに一番踊らされているのは
自分なのだ。
( 羅刹、お前が俺の全てをこうして替えていくんだな )
その心地良い侵食に、浅はかな恋の愚かさに、
直哉は苦笑しながら目の前の最も愛しい存在に溺れることにした。


恋の奴隷
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